2019年デビューの良かったクルマ(後編):池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/5 ページ)
恒例の新年企画は、1日と2日の連続で2019年に乗って良かったクルマについてだ。1日の前編では、デビュー順にトヨタRAV4、マツダMAZDA3、ダイハツのタントについて取り上げた。後編は、カローラとCX-30である。
ただしそのためには、汚名を雪(そそ)げるだけのクルマに仕立てて、もう一度ポジティブなブランドへと押し上げなければならないだろう。そしてそういう意味では、新型カローラは自ら設定したハードルを越えられるものになっていると筆者は思う。
カローラが採用するプラットフォームは、プリウスでデビューしたGA-Cプラットフォームだが、プリウス、C-HR、カローラ・スポーツ(18年モデル)、カローラシリーズ(19年モデル)と着実に進化を遂げている。
何でそんなことができるかについては以前、トヨタの製造領域のトップである河合満副社長に伺ったことがある。当時のインタビューから抜き出してみたい。
今は車両設計も生産技術も技能工も、一緒になってクルマづくりを行うようになっています。お客さんに影響がない、つまり、走る・曲がる・止まるに関係ないんだったら、ここはつくり易い方がいいだろう。でも、これはお客さんが喜ぶから、絶対キーポイントだから、たとえつくり難くてもやろうと。こういうのを全部、生産段階に入ってから、何とかしようとしても無理なんです。
例えば、プリウスとC-HRは同じ骨格を使っていますが、つくり方はデビュータイミングの差分だけ進歩しています。同じものだから同じつくり方じゃないんです。モノづくりの現場からいえば、結果が同じなら過程は変えても構わない。いかにシンプルに、いかに安くするかの工夫のしようはいくらでもあります。鉄板を加工して製品にするとして、売値が変わらないなら原材料費と加工費しかカイゼンの余地はありません。購買を工夫してコストを落とすだけじゃなくて、加工のやり方でコストを落としていく、そのカイゼンが大事です。
これはあくまでも筆者の想像だが、おそらく10年代の初期、トヨタは「これならお客さんから苦情が出ない」という線引きをして、そこへ向けての徹底したコストダウンを行っていたのではないか? 例えばヴィッツの1.3に乗って、これはギリギリのバランスだ。いったいこれに1.5を積んだらどうなってしまうのだろう? そう思いながら1.5に乗ると、1.3と同様に、ギリギリのところでバランスが取られている。当然その理由はコストにあり、そのメリットは顧客にも還元される。
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