2019年デビューの良かったクルマ(後編):池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/5 ページ)
恒例の新年企画は、1日と2日の連続で2019年に乗って良かったクルマについてだ。1日の前編では、デビュー順にトヨタRAV4、マツダMAZDA3、ダイハツのタントについて取り上げた。後編は、カローラとCX-30である。
つまり当時のトヨタのすごさは、常にギリギリを見切るその眼力にあったと思う。しかし、TNGAとともに「もっといいクルマ」を提唱し始めてからそれが変わった。河合副社長の言葉を借りれば、「これはお客さんが喜ぶから」という新しい尺度が加わったのではないか?
いや、ここは重要なポイントなのでもう少し正確に書かなくてはならない。「ハンドリングがどうとか、レースをするわけじゃないから関係ない」というコメントは筆者の記事のコメント欄にも散見される。つまりそういう性能はマニアのものであって、クルマにとっての普遍的性能ではないという理解がマーケットの側にもあった。だからトヨタはそういう要求を見切っていたのではないか?
当たり前の話だが、価格で勝負するということは、さらに安く作れる競合が現れれば価値を失う。韓国や中国のクルマが世に出てくるにつれ、価格での戦いは厳しくなる。そこで戦うトヨタの当時のアドバンテージは信頼性にあった思う。しかし競合各車の信頼性が上がって来たとき、トヨタは違う価値で戦わなければならなくなった。
それが「もっといいクルマ」であり、「お客さんがよろこぶクルマ」なのではないかと思う。そういう質的な転換がTNGA時代のトヨタを支えているし、だとすればトヨタ全体のイメージを「もっといいクルマ」で刷新しなければならない。ならば当然それは「カローラ」のイメージだって同じことなのだと思う。逆説的にいえばカローラのイメージを刷新できないトヨタには、トヨタのイメージは刷新できない。
そういう意味でもカローラの責務はとても重いのではないかと筆者は考えている。
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