2020年の中国自動車マーケット(後編):池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ)
今回の米中摩擦は一時的な問題ではなさそうだ。おそらくは中国の統治体制に何らか異変があるまで、この経済戦争は終わらないだろう。世界の自動車メーカーはどうなるのだろうか? やはり中国依存度が高いところが危ない。筆頭は欧州だ。これは自動車産業のみならず金融なども含めて中国と蜜月を深めすぎている。
さて、前編では1978年のトウ(登におおざと)小平以来、中国が社会主義市場経済をどのように運営してきたかについて、特に途上国の立場と経済大国の立場を恣意的に切り替えながら、横紙破りを続けてきたことを記した。それはなぜなのかから話を進めたい。
市場経済とモラル
第一に、中国の人々が市場経済を正しく理解していないことが挙げられるだろう。筆者の友人に電機製品の設計生産を請け負う会社を経営している男がいる。生産の多くは中国であり、当然ながら中国との付き合いは深い。
彼は最近の中国人についてこう評していた。「列に並ぶとか、大声で騒がないというような個人のマナーについては、最近大きく進歩していて、場合によっては日本人よりマナーが良いと思う時すらあります。けれどことビジネスとなると、儲(もう)けた者が勝ちだと今でも信じているし、そこにマナーや志みたいなものが必要だという意識はまだ全くないですよね」
例えば、15年に中国からインドネシアなどに輸出された米の一部が、ジャガイモのデンプンとプラスチックで作られた偽装米だったことが発覚して大騒ぎになったことがある。もちろん中国人の全てがこんなことを良しとするわけではなく、ごく一部だとは思う。ただしごく一部とはいえ、日本人の感覚からするとその裏切り方がやはり尋常ではない。
日本人でも、米で詐欺やそれに近いことを働く者はいる。例えば魚沼産のコシヒカリと称して流通している米の量は、産地の生産量を大幅に上回っており、ブレンドで嵩(かさ)ましされているというだけでは説明が付かない。しかしながら、日本の場合、せいぜいが産地の偽装止まりで、その多くはブレンド時の魚沼産コシヒカリの分量が極端に少ないという程度の話だ。
仮に通販などでこうした米を買ったとしても「値段の割に美味くなかったから、今度からあの店で買うのは止めよう」という程度の話にしかならない。
しかしプラスチック米ではそれでは済まない。実際インドネシアでは、それを食べた人の体調異常が原因でこの事件が発覚している。そうなれば「口に入れるものを通販で買うのは怖い」という話になって、通販というビジネスモデルそのものを壊してしまう。
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