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2020年の中国自動車マーケット(後編)池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/4 ページ)

今回の米中摩擦は一時的な問題ではなさそうだ。おそらくは中国の統治体制に何らか異変があるまで、この経済戦争は終わらないだろう。世界の自動車メーカーはどうなるのだろうか? やはり中国依存度が高いところが危ない。筆頭は欧州だ。これは自動車産業のみならず金融なども含めて中国と蜜月を深めすぎている。

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 昨今のアマゾンを見ても明らかなように、マーケットプレイスの商品にはサクラとおぼしきレビューがあふれ、写真とは似ても似つかない商品が届くことも多い。中国には、こういうやり方を「賢いやり方」と理解する業者がまだまだ多い。欺した欺されたもビジネスのうちだと考えているのだろう。

 最近ではアマゾン側でも、レビューがどこで書かれたかを表示するようになっており、日本でレビューされた場合には「日本でレビュー済み」と記載される。しかしこれも、偽レビューを日本から投稿する方法が確立されれば通用しなくなる。モラルが無い相手とはどうしたっていたちごっこにしかならない。

 つまりそれは、ITで覇権を握るGAFAの一角を占めるアマゾンのECですら、行儀の悪いビジネスが毀損させ始めているということでもある。「悪貨は良貨を駆逐する」と言う言葉の通り、こうしたモラルの問題は、市場経済を破壊しかねないのである。

 こうした状況になって筆者も初めて思い至ったのだが、市場経済には、明文化されたルール以外に、モラルが求められているということだ。例えば筆者が1時間程度の試乗で、クルマの出来が良いとか悪いとかいえるのも、根本的にメーカーのモラルを信用しているからであって、もしメーカーが、タイヤが外れて人が死んでも一人や二人は仕方がないと思っているとしたら、自動車のあらゆる部品を耐久テストできる施設でも持っていない限り評価できない。メーカーの人達が誠実であり、人によかれと思っていると信じてこそ、よかれがまだ足りていない部分を指摘することができるのだ。

 新幹線が事故を起こせば救出より先に隠蔽のために埋めてしまう。バスが道路にできた大穴に落ちたら救出も検討せずにコンクリートを流し込んでしまう。そういう政治を行う政府の姿を見て、商業の正しいモラルが育つとは思えない。うまく誤魔化して切り抜けることこそが賢いやり方だと、政治が示し続けていることになる。

 少なくとも、誤魔化した者、インチキを行った者は、可能な限り正しく罰せられる環境でなければ、市場経済は育たないし、そういうやったもの勝ちの悪弊は、せっかく芽生えた正しいビジネスを駆逐してしまうのだ。そして正しくないビジネスはやがて市場を焼け野原にしてしまう。経済の根底にあるのは信用なのだ。

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