5G元年は結局「から騒ぎ」に終わる? 新技術が日本を変えられない真の理由:“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)
「日本の未来を開く」などとうたわれる5G。しかしユーザー・メーカー双方に大したメリットをもたらさない可能性も。5Gでどう経済効果を生み出せるかを問う。
ユーザーの大多数に実は「必須」ではない?
スマホで1日中動画を見続ける人や、光ファイバーを使った固定のインターネット回線(NTTの商品名でいえばフレッツなど)の代わりにモバイル通信でネット接続している利用者、あるいは出先でテザリング(スマホを使ってPCなどをネット接続すること)を多用する人の場合には、高速通信の恩恵を受けられるかもしれない。
だが、大多数の利用者がそうであるように、LINEを使ったメッセージのやりとりなど一般的なコミュニケーションが中心という人は、速い方がベターではあるだろうが、5Gレベルの性能が必須かというとそうはならないだろう。
海外メーカーが圧倒、5Gの経済効果も薄く……
一方で、株式投資の世界では5G銘柄の株価上昇に期待する声があり、一部の銘柄は実際に株価が上昇している。株式投資は「うわさで買って事実で売る」ものなので、話題性があるだけでも短期的な投資家にとってはメリットかもしれないが、5Gの導入によって経済全体に恩恵があるのかというと、実は少々怪しくなっている。
5Gについては、NTTドコモなど通信会社各社が、基地局を中心に5年間で3兆円規模の設備投資を行う計画となっており、これによって大きな経済波及効果があると喧伝(けんでん)されていた。しかし、現実にはそこまで効果は発揮されない可能性が高くなっている。
日本はかつて通信機器の分野で高い国際競争力を持っていたが、ここ10年で状況は大きく変わった。18年における世界の携帯基地局機器シェアは、エリクソンやノキアなど欧州勢が約50%、ファーウェイなど中国勢が約40%、韓国・サムスン電子が約5%の一方、日本メーカー各社はそれ以下であり実質的にゼロという状況に近い。
それでもNECや富士通といった、かつての旧電電ファミリー企業は、歴史的な経緯もあってNTTグループから継続して通信機器類を受注してきた。だが5Gについては、日本メーカーは欧州勢や中国勢と比較しても十分な研究開発投資をしておらず、海外メーカーに先行されている。
通信各社は5Gへの移行をきっかけに、海外メーカーからの調達を増やす可能性が高く、5Gによって日本メーカーが飛躍するというシナリオも描きにくくなっているのが現実だ。
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