これからのSNS運用で必要なものがケロッグ、バーガーキングの成功事例から見えてきた:企業SNS「中の人」がいま考えるべきこと(3/3 ページ)
SNSは、今や必要不可欠な存在となっている。企業側も、マーケティング手法の一環として活用するのが当たり前の時代になってきた。消費者との新たな関係性を築ける一方で、いわゆる「中の人」がトラブルになったり反感を買ったりしてしまうケースも。電通メディアイノベーションラボ主任研究員を務め、SNSに詳しい天野彬氏は、これからの企業SNSは「ファスト」になるべきだと解説する。国内外の成功事例をひもときながら、解説する。
「バズる」とは何か
SNSでは、「バズる」ということがその投稿を評価する指標として語られることも多くなってきました。この「バズる」にもいろいろな形がありますが、筆者の考えるバズは、「0→1」ではなく、すでにある火種を言語化したりかたちにしたりすることで拡散させていく「1→10」のイメージです。その「1→10」をスピード感をもって大きくすることが話題化の掛金となるでしょう。
このバーガーキングの施策は英国ロンドンのCoolrというエージェンシーと組んでいるとのことで、世の中の話題を常にウォッチしながら、自分たちのコミュニケーションに生かせる火種を探し、ブランドとエージェンシーが定例的に会議をしているようです。
そして、面白い火種が見つかったらすぐにアイデアを練って迅速に発信する。ブランド/エージェンシー側の動き方もファストになっていることを意味します。
「ファスト」なコミュニケーションによる成功事例は、日本でも最近ありました。19年12月に開催した「M-1グランプリ」でも、ミルクボーイというコンビがコーンフレークを題材にした漫才ネタを披露したところ、すぐにケロッグの公式アカウントがツイートし、ミルクボーイにコーンフレークを贈呈する旨を発信していました。
投稿日時は、19年12月23日、午後6時37分。ミルクボーイのネタから24時間以内に発信していることから、スピード感は特筆するべきものだと言えます。
SNS周辺でも、「コーンフレーク」でざわついていたところの投下だったことから、このケロッグの行動自体も称賛され話題として拡散されました。これが、もし1週間後の出来事だったらむしろ興ざめでブランドにとってはネガティブですらありえたことです。
これらの事例から見えてくるのは、どちらも時代へのファストな応答であり、生活者のコミュニケーションがどんどんファストな場になっている環境へとブランドも勇気をもって飛び込むことでこれまでとは異なる存在証明を行っているということでしょう。これが企業SNSの、つまり「そばの人」のこれからの1つの在り方ではないでしょうか。
著者プロフィール
天野 彬(あまの あきら)
1986年生まれ。東京大学大学院学際情報学府修了(M.A.)。スマートフォンユーザーやSNSの動向に関する研究/執筆/コンサルティングが専門。
主著に『シェアしたがる心理〜SNSの情報環境を読み解く7つの視点〜』(2017年、宣伝会議)、『SNS変遷史〜「いいね!」でつながる社会のゆくえ〜』(2019年、イースト新書)、『情報メディア白書』(共著、2016〜2020年、ダイヤモンド社)など。経済番組でのコメンテーターや各種講演でのスピーカーなど経験多数。
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