新型特急「ひのとり」がくる! 2020年、近鉄から目が離せない:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/5 ページ)
2020年3月、近畿日本鉄道の新型特急「ひのとり」がデビューする。名古屋〜大阪間で東海道新幹線と競争だ。さらに、フリーゲージトレインの開発や、複数集電列車による大阪・夢洲と近鉄沿線の直通構想もある。近鉄が日本の鉄道の「常識」を変えるかもしれない。
フリーゲージトレインは近鉄こそメリット大
近鉄には他にも注目したい構想がある。18年に発表したフリーゲージトレイン開発と、19年に開発した「複数集電」だ。フリーゲージトレインは、線路の規格「標準軌」と「狭軌」の両方に対応した車両。複数集電は、架線集電方式と第三軌条集電方式の両方に対応した車両だ。「複数の集電方式」に当たる言葉が見当たらなかったので、取りあえず「複数集電」と呼ぶことにする。もっと良い言葉が現れたら書き換えよう。
フリーゲージトレインについては長崎新幹線(九州新幹線長崎ルート)の採用を目標として国が開発を主導してきたけれども、新幹線における実用性は難があるとして不採用になった。近鉄がフリーゲージトレインに注目した理由は、自社線内で標準軌間と狭軌間が混在しているからだ。名阪特急、京都、奈良、伊勢方面は標準軌、阿部野橋など南大阪地域と奈良県の橿原神宮、吉野エリアを結ぶ路線が狭軌となっている。
当然ながら、標準軌の路線と狭軌の路線は直通運転ができない。難波、京都、奈良、名古屋から伊勢志摩方面に直通できるけれども、吉野地域は直通できず孤立している。例えば、京都〜吉野間を移動するためには橿原神宮駅で乗り換えが必要だ。ところがこのルートだと、橿原神宮から吉野までは着席しにくい。阿部野橋から吉野行きの特急に乗り継ごうにも、ほぼ満席だ。各駅停車への乗り換えは興ざめでもある。しかしフリーゲージトレインができれば直通できる。
近鉄は19年5月に策定した「近鉄グループ経営計画」において、京都〜吉野間のフリーケージトレインの開発を盛り込んだ。そこには書いていないけれども、私はその先に阿部野橋〜名古屋、阿部野橋〜伊勢方面の構想があるように思える。
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