東京商工リサーチの調査によると、2019年1〜12月の「飲食業」倒産は799件(前年比7.9%増)で、2年ぶりに前年を上回ったことが分かった。バブル末期の1990年以降の30年間では、東日本大震災が発生した2011年の800件に次いで2番目の多さとなる。
飲食業の内訳は、「食堂、レストラン」が227件(同21.3%増)で、過去30年間では最多となった。このほか、「持ち帰り飲食サービス業」が24件(同20.0%増)、「喫茶店」が63件(同16.6%増)、「専門料理店」が192件(同9.0%増)と、いずれも増加した。
負債総額は503億8700万円(同45.9%増)で、負債10億円以上が5件(前年4件)と増加。また、同5億円以上10億円未満は10件(同2件)と前年の5倍に増え、負債は2年ぶりに前年を上回った。ただ、負債で1億円未満が725件(構成比90.7%)、資本金でも1000万円未満が713件(同89.2%)といずれも約9割を占め、小・零細業者にとって厳しい状況であることが分かる。
飲食業を細かく分類した業種小分類では、最多が「食堂、レストラン」の227件(前年比21.3%増、構成比28.4%)だった。以下、日本料理店・中華料理店などを含む「専門料理店」が192件(同9.0%増、同24.0%)、居酒屋などの「酒場、ビヤホール」が137件(同4.5%増、同17.1%)、「バー、キャバレー、ナイトクラブ」と「喫茶店」が各63件と続いた。
件数が最多だった「食堂、レストラン」は、2014年の204件を上回り、1990年以降の30年間では最多記録を更新した。また、「酒場、ビヤホール」は2012年(141件)に次ぐ2番目となるなど、店舗の淘汰が目立つ。
倒産理由は、販売不振が667件(前年比10.0%増)で最多。ついで、事業上の失敗38件(同5.0%減)、既往のシワ寄せ(赤字累積)28件(同28.2%減)だった。飲食業界は慢性的な人手不足が続いているうえ、同業者との競合で業績不振から抜け出せないケースが多い。また、近年は創業支援による「起業」ブームも背景にあるが、甘い事業計画のままの創業も目立ち、後継者難の老舗とあわせて業歴の浅い企業の倒産も少なくないという。
地区別では、9地区のうち4地区で前年を上回った。増加率の最高は、福岡(29→38件)を含む九州の55.5%増(45→70件)。ついで、広島(11→18件)を含む中国24.2%増(33→41件)、大阪(103→146件)を含む近畿11.8%増(236→264件)、中部8.7%増の順だった。一方、減少は北陸(前年比23.3%減)、北海道・四国(各同5.2%減)、関東(同0.8%減)の4地区。東北は同数だった。
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