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『ポプテピピック』の竹書房、米IT大手に著作権訴訟を挑む訳――日本漫画、世界の海賊版へ反撃の狼煙ジャーナリスト数土直志 激動のアニメビジネスを斬る(4/6 ページ)

『ポプテピピック』の竹書房が米ITに著作権訴訟を提起。背景には海賊版サイトに苦しむ日本漫画界の反撃が。遅ればせながら取ったその“反攻”の意義と展望を読み解く。

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集英社「MANGA Plus」で業界激動

 ところが2019年1月に、この無理を実現してしまったサービスが現れた。集英社がリリースした「MANGA Plus」である。

 「MANGA Plus」は海外向けの日本マンガ配信サービスで、スマートフォンアプリで日本の人気マンガの最新話などが無料で読み放題になる。対応言語は現時点で英語、スペイン語、さらにタイ語となる。日本・中国、韓国を除く全地域(一部の国を除く)が対象だ。

 集英社作品では、米国のVIZ Mediaも最新エピソード直近3話分を無料で読めるように。さらに月1.99ドルの料金で、1万話以上の過去作品が読み放題の定額見放題(サブスクリプション)サービスを実施している。

 これまでも日本版・英語版マンガのデジタル同時発売を打ち出した例はある。しかし国内・海外同時に最新エピソードを無料にしたのは、大胆な決断だ。

 破格ともいえる「MANGA Plus」のサービスだが、取り組みの大きな理由に海賊版対策がある。「MANGA Plus」について、「少年ジャンプ+」副編集長で、本件を担当する籾山悠太氏がTwitterで興味深い発言をしている。

 「海外で展開してるMANGA Plusのユーザーが急増している。先月の大手海賊版サイトの閉鎖や更新停止、Redditの海賊版へのリンク自動削除等の影響。前後を比較すると191の国・地域のうち175箇所で読者が増えていた。閲覧数が4倍になったジャンプ作品も複数ある。MAU(編集部注:月間アクティブユーザー数の意)は165万まで伸びた」。1月27日のツイートだ。

 海外での海賊版対策と正規サービス「MANGA Plus」には密接な関係があるようだ。配信を充実させることで、海賊版の影響を抑え込もうというわけだ。

 「MANGA Plus」について、海外事情に詳しいコミック翻訳者でライターの椎名ゆかり氏に聞いてみた。椎名氏は「『MANGA Plus』の効果は出ている」との意見だった。「ファンの間で、マンガは公式で読もうと意識が変わっている。『MANGA Plus』は一石を投じた」と、そのポジティブな効果を指摘する。

 では、マンガ業界はなぜ今になって、強力に海外の海賊版へ対抗しようとしているのだろうか。

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