日本企業が欧米のアニメ・マンガ業界“支配”に挑む!? 相次ぐ買収劇に潜む「真の狙い」とは:ジャーナリスト数土直志 激動のアニメビジネスを斬る(1/5 ページ)
日本企業が欧米のオタクコンテンツ系企業を相次ぎ買収している。あまり話題にならないニュースだがアニメ・マンガ業界の大転換も。アニメ・映像報道の第一人者、数土直志氏が斬る。
日本の大企業が、米国を始め欧米のアニメ・マンガ関連企業の買収を急ピッチで進めている。海外のアニメ企業に日本の資本が強力な影響力を持つようになってきたのだ。日頃、中国や米国などの海外資本が日本アニメに参画するようなニュースを目にしているファンにとっては、意外な流れかもしれない。だが、世界のエンタメ産業が激変を迎える中、日本のコンテンツ産業もグローバルな生き残り戦略を通じ、勝負に出ようとしているのだ。
「京アニ」支援も手掛けた米アニメ配給大手を買収
8月、官民ファンドのクールジャパン機構は米国で日本アニメを配給するセンタイ・ホールディングス(HD)への出資を発表した。センタイの株式の一部を約32億円取得する。経営は引き続きCEOのジョン・レッドフォード氏ら現経営陣となるが、株式保有比率はクールジャパン機構がマジョリティー(多数派)になる。少なくとも資本面ではクールジャパン機構が主導権を持てることになる。
日本ではほとんど取りあげられず、アニメ業界ですらあまり話題にならなかったニュースだが、米国の日本アニメ業界やファンにとっては日本以上に大きなニュースだ。これにより米国にある日本アニメ・マンガ流通を手掛ける大手企業のほとんどが、ハリウッドメジャーか日本企業のグループ会社になったからだ。
センタイは日本アニメのマニアックな作品に定評がある会社として、ファンや業界関係者におなじみだ。『けいおん!』や『メイドインアビス』『ポプテピピック』『バンドリ!』『ハイキュー!!』などの人気タイトルを多く北米で展開している。作品タイトル数は700以上、独自の動画配信プラットフォーム「ハイダイヴ」も運営する。
同社は「萌え」や「日常」「ロボット」「お色気」といった、コアファンに支持の高いジャンルを得意とする。数ある米国の日本アニメ会社でもとりわけファンの目線に近い。
先頃は、京都アニメーションの放火事件に際して被災救済のクラウドファンディングをいち早く立ち上げたことでも注目を浴びた。まさに米国のアニメファンコミニティーの中核が買われたと言っていいかもしれない。
アニメファンや業界関係者にも突然なM&A劇ではあったが、実はこうした日本企業による海外のアニメ・マンガ関連企業の買収は近年急増している。今回のクールジャパン機構=センタイに限ったことではない。海外展開を目指すアニメ・マンガ関連の日本企業は、海外進出にあたり現地で実績を持つ企業への買収戦略を積極的に進めている。
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