『ポプテピピック』の竹書房、米IT大手に著作権訴訟を挑む訳――日本漫画、世界の海賊版へ反撃の狼煙:ジャーナリスト数土直志 激動のアニメビジネスを斬る(6/6 ページ)
『ポプテピピック』の竹書房が米ITに著作権訴訟を提起。背景には海賊版サイトに苦しむ日本漫画界の反撃が。遅ればせながら取ったその“反攻”の意義と展望を読み解く。
北米はマンガの「1桁上回る潜在市場」
日本に較べて小さい海外市場だが、見方を変えれば小さいからこそ将来的には魅力がある。それだけ成長余地が大きいからだ。北米のコミックス市場は日本の1/4、しかし人口は3倍だ。
米国人だけが、コミックス・マンガに関心を示さない特別な消費者であるとは思えない。文化に対する支持・熱狂という物は世界共通なはずだ。日本のマンガ市場5000億円を念頭に置けば、北米にはいまの数倍どころが、1桁違う潜在市場があるはずである。
また北米のコミックス・マンガ市場は、デジタル流通が全体の1/10程度と小さい。デジタル市場の拡大が日本に較べて遅れているのは、市場競争が極めて限定されていることも理由にある。市場の大半がAmazon Kindleと、Amazon傘下のデジタルコミック配信専門のcomiXologyに占められる。デジタル流通を扱う企業が限られることで、日本マンガのデジタルでの普及も限定される。その間に海賊版サイトが広がった。
実は紙出版でも、ダイヤモンド・コミック・ディストリビューションという流通会社が、コミックスの流通をほぼ独占している。特定企業による寡占が北米のマンガ市場拡大を制限している可能性は高い。
そこに新興企業の入り込む余地がある。市場は1社に占有されているように見えるが、未開拓の潜在市場の部分にはむしろ競争者はゼロである。
デジタル時代の新たな流通を築くことで、新興企業にも、そして日本の出版社にもチャンスはある。むしろ新たな参入者こそが、これまでにない大胆な手を打つことで勝てるかもしれない。「MANGA Plus」はその一部を切り崩した。それでも集英社の作品に限られるが、日本のマンガが海賊版を抑えつつ、海外、とりわけ北米で広がっていくヒントは確実にある。
アニメやゲームのような作品・コンテンツの流通システムが築ければ、北米、そして世界の市場は大きく変わり、広がっていくと考えるのは夢を見過ぎだろうか。
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