中国の超大国化がリスクに 新型コロナウイルスで表面化した「アジア人差別」と日本:世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)
中国発の新型コロナウイルスが世界で混乱を引き起こしているが、人種差別まで“伝染”している。欧米における「中国人への差別」は、同じアジア人である日本人にも降りかかる。この問題は世界の反中意識が高まれば、さらに深刻になる可能性がある。
世界で強まる「アンチ中国」の動き
海外のメディアを見ると、すでに紹介したフィナンシャル・タイムズ紙だけでなく、似たようなニュースが世界中で報じられている。フランスのテレビ局のユーロニュースは、アジア系フランス人の間で「#JeNeSuisPasUnVirus」、つまり「私はウイルスではない」というハッシュタグがTwitterで広がっていると指摘。中国発の新型コロナウイルスによって、アジア系がウイルスであるかのように見られている、というメッセージが拡散されている。また、実際に「イエロー警報」と一面に書いた新聞もある。
カナダのテレビ局、グローバルニュースは今回“アンチ中国”の意識が高まっている背景には、中国が世界的に影響力を強めている貿易や政治、外交において、中国との間に問題を抱える国が多いこともあると指摘している。
もっとひどいものもある。「胎児を食べる中国人が世界に非難されている」という動画がFacebookで拡散され、そのメッセージ欄には「こういう奴らが新型コロナウイルスをばらまいている」といったメッセージも書き込まれている。
一方で、中国国営テレビ局の中国グローバルテレビジョンネットワーク(CGTN)は、米国のある幼稚園の園長が「誰だって病気になるかもしれないのだから、中国人や中国人につながっている人たちを孤立化させないで」とメッセージを出したという話を紹介したほか、カナダのトロントで「市長が汚名と差別に対して中国人のコミュニティーと一緒に立ち上がると語っている」と報じている。
こうした事態は、私たちの近くでも起きている。日本や韓国、香港やベトナムでは、中国人を拒否する飲食店などが出てきて話題になっている。日本では、札幌市のラーメン店が「中国人入店禁止」の看板を出したり、神奈川県の駄菓子店が「コロナウイルスを散布するだけの中国人種は入店禁止」と張り紙をしたりしているとニュースになっているし、韓国のレストランには「中国人お断り」と掲げているところもあると報じられている。ベトナムでも、ネイルサロンなどで中国人を拒否する張り紙が上げられている。
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