「としまえん閉園」は寂しいけれど…… 鉄道会社にとって“遊園地”とは何か:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/6 ページ)
東京都練馬区の遊園地「としまえん」が閉園し、跡地は大規模公園、一部にテーマパークができると報じられた。お別れは寂しいが、鉄道会社系遊園地の役割は大きく変わり、これまでにもたくさんの施設が閉園した。その跡地には、時代に合った街ができている。
としまえんは前年度比120%の集客増だった
報道によれば、としまえんの来園者数は1990年代に400万人を超えていた。しかし、レジャー産業の情報企業、綜合ユニコムが発表した2019年版のデータでは112万4881人だ。最盛期の4分の1程度となった。それでも、綜合ユニコムの分野別集計の遊園地カテゴリーでは全国第4位をキープしている。ちなみに1位は「鈴鹿サーキット」で、これを「モータースポーツのテーマパーク」とするなら、純粋な遊園地としては全国3位といえそうだ。
としまえんは創業から90年を超えており、40年以上現役のアトラクションもある。修繕しつつ大切に扱ってきたと思う。しかし装置産業としては鉄道と同じで、老朽化や交換部品を調達できないなど、将来性への不安もある。少子高齢化による集客減少も鉄道と同じでジワジワと響いてくるだろう。
現状維持であれば年間100万人前後の入場者数でも事業を継続できる。19年版のデータでは前年度比20%増と健闘した。電車の運転を楽しめる「チャレンジトレイン」に西武鉄道の新型特急「Laview」を加えたことや、2年目となったナイトプールと打ち上げ花火が好材料だった。まだまだ回復策はあるだろう。かつての来場者数を取り戻すなら、新しいアトラクションを導入したい。しかし、ここで巨額の費用投入は賭けである。
一方、綜合ユニコムの統計では、東京ディズニーランドやサンリオピューロランドは「テーマパーク」に分類しており「東京ディズニーランド・東京ディズニーシー」が3255万人と圧倒的首位。2位に「ハウステンボス」があるけれども、実質的には入場者数非公開の「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」が1500万人を超えているはずで、ハウステンボスが実質的3位の272万人。4位はサンリオピューロランドの219万人と続く。
としまえんの面積は約22ヘクタールだ。これに対してサンリオピューロランドの面積は4.59ヘクタール。サンリオピューロランドはとしまえんの約5分の1の面積で、来場者は2倍。土地の利用効率から見てもサンリオピューロランドが上だ。西武鉄道がとしまえんエリアの発展策として、なんらかのキャラクターとタイアップしたテーマパークを選択するという考え方は合理的といえる。
『ハリー・ポッター』は原作者のJ.K.ローリング氏が現在も続編を手掛けているから、長く続くコンテンツになるだろう。少子化が進むなら、子ども向けの遊園地より、幅広い世代をターゲットにしたいはずだ。筆者は沿線で制作されている『機動戦士ガンダム』や西武鉄道が力を入れている日本製アニメのテーマパークがいいと思うけれど、世界的テーマパーク市場を考えると『ハリー・ポッター』かな、とも思う。
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