「人材サービス」が“社会の敵”にならないために 運営側、企業側、求職者全てが知っておくべき基本事項:新連載・「人材サービス」が滅ぶ日は来るのか?(3/5 ページ)
2019年、就活サイトの内定辞退率問題で注目を集めた「人材サービス」だが、今その公益性が問われている。しかしながら、ひとくちに「人材サービス」といっても、その実態はなかなか分かりづらいのが現状だ。「人材サービスの公益的発展を考える会」を主催し、「人材サービス」に詳しい川上敬太郎氏が分かりやすく「そもそも」を解説する。
職安は世の中からなくならない
人材サービスが有する機能の幅広さや提供者の属性が多様であることも、人材サービスの実態が把握しづらい理由に関係しているように思います。
ここで、冒頭に掲げた「人材サービスの存在意義はどこにあり、何が課題なのか?」という問いに戻ると、広義の人材サービスの守備範囲があまりにも広いため、考察すべき対象を絞る必要がありそうです。
例えば、教育訓練や労務管理補助など、求職者サポートや求人企業サポートについては考察対象としての優先度は低いと思います。広義では人材サービスの一環といえるものの、個々が持つニーズをそれぞれ単独で満たすという意味では一般的なサービスと同じなので、人材サービス特有の存在意義を考察する対象として最適とはいえません。
また、公共職業安定所も考察対象として優先度が低いと思います。職安は全国に500カ所以上設置されている国内最大の労働力需給調整機関です。求職者も求人企業も無料で利用でき、失業手当の認定などの窓口でもあります。完全に社会のインフラとして機能し定着しています。
もちろん、公共職業安定所のサービス内容については改善余地があるのかもしれません。しかし、公共職業安定所そのものを世の中からなくすということにはならないと思います。サービス提供の形は変わって行くことがあるかもしれませんが、その存在意義は十分認識されています。同様の理由から、労働組合や学校が有している需給調整機能についても、考察すべき対象の優先度としては低いと考えます。
以上を踏まえて先ほどの表に反映すると、考察すべき対象としては、民間事業者が提供する労働力需給調整機能のみが残ります。
民間人材サービスの4類型
今後考察したいのは人材サービスが有する“機能”面、中でも民間事業者が提供する労働力需給調整機能についてです。
ただ、民間が提供する需給調整機能にフォーカスすれば、人材サービスの実態が見えやすくなるかというと、それでも一般的には分かりづらいと思います。なぜなら、大きく分けても、人材紹介、人材派遣、求人媒体、アウトソーシング(業務委託・請負)といった4つのサービス形態があるからです。
これら4つの形態は、サービス提供の際に、それぞれ異なる法制度の制約を受けています。そんな法制度との関わりと対比させた考察は、既に学識者の方々を中心にさまざまな専門家が深く掘り下げています。
ただ、法制度論は専門的すぎて一般的に分かりづらい面があります。本来であれば、全ての国民が法制度を守ってサービスを利用する訳ですから、誰もが理解して順守できるように、もっと分かりやすいものでなければならないはずです。しかし現実は、人材サービスを取り巻く法制度は複雑です。それもまた、人材サービスの実態が見えづらくなっている一因かもしれません。
さらに、民間事業者が提供する需給調整機能は非常に特徴的で、その存在意義について単純に評価することが難しい面もあります。理由として2点を挙げたいと思います。
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