活況の“転職市場”を支える「人材サービス」 企業が知るべきことと事業者が心掛けるべきこと:連載・「人材サービス」が滅ぶ日は来るのか?(3/5 ページ)
2019年、就活サイトの内定辞退率問題で注目を集めた「人材サービス」だが、今その公益性が問われている。しかしながら、ひとくちに「人材サービス」といっても、その実態はなかなか分かりづらいのが現状だ。「人材サービスの公益的発展を考える会」を主催し、「人材サービス」に詳しい川上敬太郎氏が転職に関するサービスを解説する。
コストが高くても人材紹介が使われる理由
しかし、求人媒体に掲載しても、労働市場に少ないような人材を採用しようとすれば応募が1件もない、ということもありえます。もし応募があったとしても、その人材を採用できるとは限りません。仮に1回の広告に30万円の料金がかかる場合、6回利用すると180万円です。それで年収500万円の社員を1人採用できたとしても、人材紹介を利用した際に支払う手数料の金額を超えてしまっています。
従って、採用に苦戦することが想定されるハイスキル人材などであれば、求人媒体よりも人材紹介を利用した方がむしろリーズナブルな場合があると言えます。人材紹介は、採用が決定するまで費用が発生しないのが一般的です。また、採用後も短期間のうちに本人都合で退職してしまった場合は、手数料が返金される制度も一般的です。
例えば、入社後3カ月以内に本人都合で退職した場合は手数料の50%を返金する、という具合です。高い手数料が課題の人材紹介ですが、採用する側がサービスの特性を理解した上で利用すれば、コストメリットも含めて有用なサービスでしょう。
一方、転職する側から見た人材紹介(求職者から見ると職業紹介)の有用性はどのようなところにあるのでしょうか。人材紹介は、企業側が高い手数料を支払うサービスだけに、扱う求人の多くは相応のスキルや経験を応募条件にしています。概して採用に至るまでのハードルは高めです。それでも、相応のスキルや経験を有する人にとっては転職時の武器になります。それが、入職経路としての比率は高くないものの、堅調に利用され続けている理由だと考えられます。
また、ほとんどの場合、求職者が人材紹介を利用する際に料金はかかりません。登録すれば、条件に合う求人が見つかったとき、人材紹介事業者から連絡が入ります。自分は今の会社に在籍したまま、人材紹介事業者が転職先を探してくれる点は大きなメリットです。
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