AIが投資する時代 「FOLIO ROBO PRO」はAIで何を予測するのか(4/4 ページ)
投資におけるAIの活用方法は幅広い。航空写真を使って原油のタンクや駐車場の混み具合をチェックし、需要予測を行うといったものから、SNSやニュースサイトの文章を解析して暴落の前兆を見つけ出すものまでさまざまだ。FOLIOが新しくスタートさせたROBO PROでは、各資産の将来の値上がり率(リターン)の予測にAIを使った。利用したのは、為替予測などで金融機関に幅広く採用されているAlpacaJapanの技術だ。
バックテストは好調
ROBO PROのモデルを使ったバックテストの結果では、2015年のチャイナ・ショック後の12月、株式比率を抑え、金を32%も組み込むというポートフォリオを組んでいる。結果、16年の下落を回避することに成功している。
18年は株式市場が膠着した年だったが、好調だったのは不動産だ。同じくバックテストでは、債券比率を37%まで高めつつ、不動産に31%を回すことで大きくリターンを獲得した。
18年末の大幅な株価下落を受けて、19年1月のタイミングでは米国株比率を40%とするなどリスクを取ったポートフォリオに変更。結果、19年の好調な株式市場の恩恵を受けることができている。
FOLIOが公開しているバックテストのグラフはリターンのみを示しているが、「(リスクに対するリターンの比率である)シャープレシオは、一般的なロボアドと比較して改善している。またシャープレシオの改善に伴い、リスクも低減する結果となった」と廣瀬氏。具体的なシャープレシオの値は開示していないが、単なるパフォーマンスではなく、リスクを重視してポートフォリオを組み上げるモデルだ。
AI活用するも、コストは一般的なロボアド同等
AIの活用、ダイナミックなポートフォリオの調整。こうした仕組みを盛り込みながら、コストは従来のロボアドと同等の、預かり資産額の1%とした。「人間が運用するスタイルではないので、低コストの運用ができている。アクティブに運用する投資信託と比べれば、手数料は低いのではないか」と石坂氏。
ただし、バックテストの成績はあくまで過去の「たられば」であり、今後も同じような結果が出るかは分からない。モデルの巧拙だけでなく、学習に使ったデータが適切で十分かという点もある。例えば米国債金利は80年代から継続的に下がり続けて、インフレも数十年にわたり低く抑え込まれてきた。これらがこのまま続くという保証はない。
しかし、従来高いコストをかけてファンドマネージャーが分析し、反映させてきた将来の見通しを、ROBO PROでは低いコストでポートフォリオに反映できるようになった。機関投資家のサポートにAIを使うことは増えてきたが、個人向けの資産運用においても、AIが身近になってきたといえるだろう。
関連記事
- レバレッジ付き投資信託続々 機械学習も組み合わせた「米国分散投資戦略ファンド」
レバレッジ付きの投資信託が注目されている。新たに三井住友DSが開始する「米国分散投資戦略ファンド」では、1倍、3倍、5倍というレバレッジ付きの商品を用意することでリターンを拡大し、機械学習を使ってダイナミックにポートフォリオを調整する。 - 「レバレッジに対する印象を変えたい」日興アセット「3倍3分法ファンド」が人気の理由
日興アセットマネジメントの投資信託「グローバル3倍3分法ファンド」が人気。株式と債券、不動産という代表的な3つの資産に分散投資するだけでなく、レバレッジをかけて3倍の投資を行う。レバレッジのリスクとメリットを聞いた。 - 資産運用で挫折しそうなときに“激励” AIが読み取るユーザーの心理とは?
資産運用の王道は、長期・分散・積立だが、この「長期」が難しい。相場が下がれば不安になるし、上がれば利益を確定したくなるのが人の心理だからだ。長期投資できないという資産運用の最大の落とし穴を、AIがサポートする研究をウェルスナビが東大松尾研究室と進めている。 - ロボアドに税金の自動最適化機能 THEOの独自性はどこか?
税金の自動最適化機能をTHEOが6月から提供開始する。ロボアドバイザーではリバランスに伴い税払いが発生することが多いが、それを最適化する仕組みだ。競合のWealthNaviも税の最適化機能を提供している。 - Fund of the Year 2019、「eMAXIS Slim」が上位占める
投資信託に関するブロガーが年に一度、支持する投資信託を選ぶ「投信ブロガーが選ぶ!Fund of the Year 2019」の発表が1月18日に行われた。1位となったのは三菱UFJ国際投信の「eMAXIS Slim 全世界株式(オールカントリー)」だった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.