スパイは社員に紛れている! 三菱電機、ソフトバンクの情報漏洩が人ごとではない理由:世界を読み解くニュース・サロン(5/5 ページ)
三菱電機やソフトバンクの社内情報が、サイバー攻撃やスパイによって流出したことが報じられた。だが、このような手口は最近始まったことではないのが現実だ。日本の全ての企業が標的になっていると考えて対策に乗り出さなくては、どんどん喰い物にされてしまう。
中国、ロシアは何を狙っているのか
今回のケースを見れば、三菱電機で人材情報が盗まれた背景には、中国政府が力を入れている「中国製造2025」がある。25年までに中国を「世界の工場」から「イノベーションを起こす国」に変えたいという政策だが、今それを目指して中国はテクノロジー分野に強い韓国や台湾、そして日本から人材を獲得すべく、カネをチラつかせるなどして追い込みをかけている。人材情報はのどから手が出るほど欲しい。その情報を手に、人を使ってスパイ工作が行われる可能性がある。
ロシアのケースもしかり。ロシアは今、ウラジーミル・プーチン大統領が5Gを開発しようとしているが、いくつか技術的なハードルに直面している。すでに5Gで先行している国々の技術的な情報を欲している。それがスパイ活動につながっていると考えられる。
そうした情報を見れば、常に狙われている日本の企業が、何に気を付けるべきかが見えてくる。少なくとも、誰しも彼らの餌食になる可能性があることを肝に銘じるべきである。
最後に、こんな怖い話を紹介したい。これは実際に最近あった、ある国のスパイ工作の一端だ。
一般の社会人として大手企業に就職した人物がいた。この人物は、入社してから何年もかけて会社から社外秘の情報をバレないように抜き出していたという。そして何年かしてから退職し、それらの情報を母国の諜報機関に渡した。そもそもこの人物は、最初から情報を盗むために企業に送り込まれたスパイだった――。
日本が喰いモノにされている現実を今こそ、自覚すべきなのである。
筆者プロフィール:
山田敏弘
元MITフェロー、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)がある。テレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。
お知らせ
新刊『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)が1月21日に発売されました!
イラン事変、ゴーン騒動、ヤバすぎる世界情勢の中、米英中露韓が仕掛ける東アジア諜報戦線の実態を徹底取材。
『007』で知られるMI6の元スパイをはじめ世界のインテリジェンス関係者への取材で解き明かす、東京五輪から日本の日常生活まで脅かすさまざまなリスク。このままでは日本は取り残されてしまう――。
デジタル化やネットワーク化がさらに進んでいき、ますます国境の概念が希薄になる世界では、国家意識が高まり、独自のインテリジェンスが今以上に必要になるだろう。本書では、そんな未来に向けて日本が進むべき道について考察する。
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