日本が圧倒的に「低賃金の暮らしにくい国」に堕ちた真相 訪れる“最悪の未来”とは:“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)
「海外は賃金も高いが物価高で暮らしにくい」という幻想。OECD賃金データからは逆に「圧倒的に暮らしにくい国」日本の実像が。諸外国のように成長できない日本を待つ最悪の未来とは?
GDPが成長する諸外国、しかし日本は……
私たちの生活のほとんどは輸入品で成り立っているので、海外で物価上昇が進むと、輸入品の価格が上がってしまい、日本人にとっては高い買い物になってしまうのだ。
例えば自動車というのはグローバルな産業なので、国内事情とは無関係に価格が決まる。トヨタ自動車の1台あたりの販売価格は、95年には225万円だったが、18年は327万円にまで上昇した。自動車の価格はデフレなどお構いなしに上がっており、もはや平均的な年収の労働者では簡単には買えない水準になっている。一方、諸外国では自動車価格も上がったが、それ以上に賃金も上がっているので、自動車購入の負担はむしろ低下している。
では、諸外国ではなぜ物価に合わせて賃金も上昇していくのだろうか。それは経済が活発で、GDP(国内総生産)成長率が高いからである。
GDPというのは基本的にその経済圏でどれだけのモノやサービスが売買されたのかを示す指標である。たくさんのモノやサービスが取引されればGDPは増えていくが、売買には貨幣を仲介させる必要があるので、物価という概念が出てくる。
もし取引が活発で、次々と商品が売れる状況になった場合、一部の事業主はさらにもうけようと価格を上げる。そうしない事業主もいるが、取引が活発になると多くの人を雇う必要があるため、労働者の争奪戦となり賃金は上がっていく。事業主にとってはコストが増える結果となるので、同じ利益を維持するためには、やはり製品価格に転嫁せざるを得ない。
こうした現象が続くと、賃金が上がって物価が上昇し、それがさらに賃金を押し上げるという循環が発生する。取引が活発になると、まずは人員が必要となるので、どちらかというと賃金が先に上がり、その後に物価がついてくることが多い。これが好景気に伴うインフレ(物価上昇)であり、日本以外の諸外国は過去20年、そのような状況が続いてきた。この逆の循環がデフレであり、商品が売れないので、人が余り、賃金が下がるという悪循環になる。
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