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フィンテックは日本の個人投資の起爆剤に? Fintech協会理事の神田潤一氏インタビュー新連載・フィンテックの今(4/4 ページ)

日本の個人金融資産は1800兆円に上るものの、依然として現預金が占める割合が高く、十分な資金が投資には回っていない。個人の資産形成が十分に進まない現状を、フィンテックがどう変えるのか。Fintech協会理事の神田潤一氏に聞いた。

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――今後、フィンテックが中心となって投資を盛り上げていくために解決すべき課題はありますか。

神田 一部の金融機関はスピード感を持って動き出しているものの、業界全体としての変化のスピードは、当初の期待よりも遅いと感じている人は多いのではないでしょうか。やはりメインの顧客がシニア層と考えると、どうしてもデジタライズ移行の対応が遅くなりがちなのかもしれません。ただ、フィンテックと既存の金融機関がシステム接続して協業していく「オープンAPI」が進むなど、変化は確実に起こっています。こうした変化をチャンスと捉え、既存の金融機関とフィンテックの連携が進んでほしいと思っています。

 税制や広報など、政府のバックアップも必要でしょう。現行のiDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)は呼び水として着実に進めていくべき取り組みだと思います。これらに加えて、若い世代がもっと関心を持ち、投資するのが楽しくなるようなフィンテックのサービスを推奨したり、税制の優遇だけでなくキャッシュレスのポイント還元のような「やればお得、やらないと損」だと感じるような施策によって若い世代の背中を押したりといった取り組みにも期待したいと思います。

 自動料金収受システム(ETC)は導入の際、ETC利用者を大幅に優遇し、半ば強制的に利用者に移行を促しました。直近ではキャッシュレスについても政府の後押しが功を奏しています。同様に、資産運用についても利用者に大きなインセンティブを与えるような施策も検討の価値があると思います。

――今後、フィンテックではどのようなサービスが生まれると考えていますか。

神田 気候変動などをきっかけに、国連が30年に達成を目指している「持続可能な開発目標(SDGs)」に対する関心が、国内外で高まっています。今後は個人の間でも投資によって社会問題の解決を図る「インパクト投資」への意識が高まるでしょう。

 こうした個人の問題意識に合わせて気軽に資金を振り向け、社会貢献できるようなサービスがフィンテックから生まれると見ています。グローバルな問題だけでなく、地方や自治体などのコミュニティやスポーツチームなど、小さな単位の取り組みに対する投資や資金提供も増えるでしょう。20年はブロックチェーン(分散型台帳)などを使った資金調達、STO(セキュリティー・トークン・オファリング)の運用が始まります。これによってさまざまな人々の趣味や関心に合わせてより小口化・柔軟化した資金調達が可能になることも後押しとなると見ています。

識者プロフィール:神田潤一(Fintech協会理事/株式会社マネーフォワード執行役員)

東京大学経済学部卒。米イェール大学より修士号取得。1994年日本銀行に入行、金融機構局で金融機関のモニタリング・考査などを担当。2015年8月から2017年6月まで金融庁に出向し、総務企画局企画課信用制度参事官室企画官として、日本の決済制度・インフラの高度化やフィンテックに関連する調査・政策企画に従事。2017年9月から現職。2017年11月より、一般社団法人Fintech協会理事を務める。


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