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23年ぶり社長交代のイオンの過去と未来 衰退したダイエー、勢いを増すAmazonから分析する小売・流通アナリストの視点(6/6 ページ)

23年ぶりの社長交代を発表したイオン。バブル崩壊、スーパー業界の再編の中、ダイエーが衰退した一方で同社はなぜ成長できたのか。膨大なデータ基盤で“巨大なよろず屋”はデジタル時代を勝ち抜けるか。

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「地方・郊外・シニア」データを持つ強み

 その点では、日本で最もデジタル化に対応できる素地を持っている小売業は、言うまでもなくイオングループだということになる。キャッシュレス決済ブームの前から、地道に浸透させてきた電子マネー「WAON」で取得したデータ量は、国内トップクラスのキャッシュレス決済手段である。その上、シニアに対しても意外と浸透しており、地方、郊外、シニアといったキャッシュレス決済がカバーしづらい顧客層のデータでは、圧倒的な強みを持っている。

 さらに言えば、ショッピングモール運営で国内ナンバーワンの実績があるということは、テナントデータも含めて極めて多種多様な購買情報を入手可能ということでもある。これはかなり大きな強みとなる。例えば、セブン&アイ・ホールディングスの「nanaco」もデータ量は相当な量だろうが、弁当、おにぎり、飲料、お菓子のデータばかりが膨大にあるだけだとすれば、データ価値が高いとは、必ずしも言えないからだ。

 今回、イオンの経営が交代したことの意味は、イオンがこうした自らの潜在価値を十分に認識した上で、データ武装をしていくための、世代交代の意思表示なのだと解したい。もし本当にそうであれば、“巨大なよろず屋”を作り上げたことの真なる価値が、次世代で評価される可能性は大いにあると思うのである。

著者プロフィール

中井彰人(なかい あきひと)

メガバンク調査部門の流通アナリストとして12年、現在は中小企業診断士として独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。


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