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23年ぶり社長交代のイオンの過去と未来 衰退したダイエー、勢いを増すAmazonから分析する小売・流通アナリストの視点(5/6 ページ)

23年ぶりの社長交代を発表したイオン。バブル崩壊、スーパー業界の再編の中、ダイエーが衰退した一方で同社はなぜ成長できたのか。膨大なデータ基盤で“巨大なよろず屋”はデジタル時代を勝ち抜けるか。

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小売りに関する「デジタル化」の誤解

 日本の小売業に関するコメントで、「デジタル化対応への遅れ」というような言葉を使い、対EC小売での劣勢について書いてあるものをよく見かけるが、「デジタル化≒EC対応(もしくは無人店舗化)」といった論調には違和感がある。そもそも、小売業における「デジタル化」とは何かという認識を勘違いしていないだろうか。

 ざっくり言って、デジタル化とはこれまでもデジタルデータとして取り込むことができたPOSデータや、それを個人単位で分析できるIDなどの体制整備に加えて、さまざまなセンサーを活用して画像データ、音声データを収集して、顧客の購買行動を分析可能なビッグデータ環境を作り出すことだと筆者は考える。

 その際、AIやIoTなどの先端的技術が必要とはなるが、これは小売業が開発しなくても、テックベンチャーなどの開発した技術を採用すればよく、この点では“目利き力”さえあればよいということになる。そもそも、こうしたテクノロジーの進化スピードは極めて速いので、技術自体はすぐに陳腐化してしまうし、その分、後追いでも逆転できる可能性はなくならない。そんなことより、小売業として重要なのは、データ化の手法より、データを取得すべき相手、顧客との多様な接点が十分に維持されているか、ということなのだ。


小売りのデジタル化で必要なのは「顧客との接点」(画像はイメージ、出所:ゲッティイメージズ)

 無人でデジタルデータを完璧に取得できる店舗を用意したとしても、誰もその前を通ることのない場所で営業しては意味がない。データを取るべき顧客が来ないのであれば、本末転倒。デジタル化の遅れとは、さまざまなセンサー付きの無人店舗を作ることやEC化対応、というのも無関係ではないが、まずは、顧客データを取得するためのインフラであるIDの構築と、顧客の生活を伺い知るに足る多様な接点があることが、「デジタル化」のプレイヤーとしての必要条件といえる。顧客との多様な接点があって初めてデジタル武装する意味があるのだから。

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