23年ぶり社長交代のイオンの過去と未来 衰退したダイエー、勢いを増すAmazonから分析する:小売・流通アナリストの視点(4/6 ページ)
23年ぶりの社長交代を発表したイオン。バブル崩壊、スーパー業界の再編の中、ダイエーが衰退した一方で同社はなぜ成長できたのか。膨大なデータ基盤で“巨大なよろず屋”はデジタル時代を勝ち抜けるか。
イオンの収益源は20年で一変
イオンの創業家である岡田家の有名な家訓に、「大黒柱に車をつけよ」というものがあるが、これこそ、スクラップ&ビルドの精神を一言で表したものであると言っていいだろう。創業家2代目の“治世”が終わるに際して、多くのマスコミの論評は、トップシェアの小売業グループを作り上げたのは素晴らしいが、これまでの延長線上での巨大よろず屋を作り上げたにすぎない、とか、デジタル化への対応に遅れ、といった批評がなされているようだが、家訓の精神は2代目の時代にも十分発揮されていたという見方もできる。これは、店舗のスクラップ&ビルドのみならず、事業単位でみても同様のことがいえる。
イオングループの部門別営業利益を00年時点と19年とで比較すれば、その変化は一目瞭然に分かる。00年時点では、総合スーパー部門でほとんど稼いでいた状況は今や一変し、19年時点では金融事業やデベロッパー事業が収益の柱となっている。
これは、「本業で収益を稼ぐことができなくなった不振小売が、片手間の副業で生活を立てている」という見方もあるだろう。一方で時代の変化に合わせ、大黒柱を別の場所に移して、収益を確保できる体制を構築したということでもある。低収益ながら多くの顧客との接点を確保している商業施設を軸に、デベロッパー、金融などの派生事業で収益を生み出す仕組みを築いたことは、大いに評価されるべきだと筆者は考える。
いまや小売の王者となったAmazonですら、その収益の多くを非小売部門が稼いでいるのはご存じの通り。では、なぜもうかりもしない小売をAmazonが拡大し続けるのかといえば、決して小売の王者となることが目的なのではない。ECの拡大を通じて、膨大な個人の購買行動やその他のビッグデータを収集することにあることは今や周知の事実である。こうした目線でイオンの20年を見てみると、ちょっと違う側面も見えてくる。
関連記事
- 「ヤフー・LINE」対「GAFA」は間違い? 本当のターゲットは金融業界だ!
経営統合を発表したヤフーとLINE。各報道ではGAFAと比較した“過小評価”が目立つが、筆者の見解は違うところにある。ヤフーの持つ決済機能や携帯キャリアであるソフトバンクとの相乗効果を加味すれば、今回の統合でまず影響が及ぶのは金融業界だと筆者は想定している。それはいったいなぜなのか――小売・流通アナリストの中井彰人氏が鋭く切り込む。 - 新型コロナウイルス感染拡大でもイオンはマスク着用「原則禁止」維持 ディズニーなど各社の対応は?
新型コロナウイルスの感染が拡大しており、各企業は柔軟な対策が求められている。東京ディズニーランド、ディズニーシーではキャラクターと来園者のふれあい方法を一部変更。エン・ジャパンでは、採用面談をWebに切り替えるなどしている。マスク禁止で話題になったイオンは…… - 赤字に苦しんできたダイエーに“復活”の兆し 流通帝国の崩壊から黒字化までの道のりをたどる
再建途上のダイエーが黒字化しそうになっている。一大流通帝国を築いた道のりを振り返る。なぜ、今になって復活の光が見えてきたのか。 - 楽天、送料無料化で「三方良し」掲げるも実態は「独り勝ち」? 強気の三木谷社長 欠ける説得力
楽天市場の送料一部無料化問題が波紋を広げている。3月18日に開始することを予定しているが、出店者の反発はおさまらない。強気の三木谷社長だが、説得力には欠けるのが現状だ。Amazon追従に何よりも必要な「出店者の理解」は得られるのか。 - 課長の平均年収は932万円、部長は? 外資との「格差」も明らかに
日本で活動する企業の報酬状況が発表。日系企業と外資系企業合わせて679社が参加した。調査結果では課長職や部長職の平均年収も明らかになった。日系企業と外資系企業の報酬格差も合わせて発表し、特に役職者以上で顕著な開きがあった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.