23年ぶり社長交代のイオンの過去と未来 衰退したダイエー、勢いを増すAmazonから分析する:小売・流通アナリストの視点(3/6 ページ)
23年ぶりの社長交代を発表したイオン。バブル崩壊、スーパー業界の再編の中、ダイエーが衰退した一方で同社はなぜ成長できたのか。膨大なデータ基盤で“巨大なよろず屋”はデジタル時代を勝ち抜けるか。
イオンは積極的にスクラップ&ビルド
90年代〜00年前後のイオン(当時ジャスコ)を見ると、その動き方はダイエーと全く違う。もともと、大手に連なるのが遅れたジャスコは、地方への展開を進めていく際にも後発なので、中心市街地の1等地はダイエーや地場大手に押さえられていた。
このため、ジャスコ店舗の多くが、クルマの普及によって生まれた「郊外のロードサイド」という新しい立地環境に建てられていた。そして、「これからは地方ではロードサイドが商業立地の中心になる」と気付いたイオンは、中心市街地の店舗についても順次、郊外のロードサイドの巨大な複合商業施設へと転換を進めていった。これがダイエーではあまり見られなかった、イオンのスクラップ&ビルドなのである。
イオンは、店舗が老朽化したり、環境変化によって立地環境が変化していると判断したときには、ためらうことなく、店舗をスクラップし、新たにつくる。最近でも、筆者の自宅近くにあるイオン天王町店(横浜市保土ケ谷区)が閉店したが、一部スペースをマンションとして分譲しつつも、新たなショッピングモールとして再生させるという。
この店は確かに老朽化してはいたが、聞いたところによると首都圏でも有数の集客があり、トップクラスの売上を維持していた店であるらしい。小売業界では、スクラップ&ビルドという理屈は常識ではあるのだが、それを実行できるかといえば、必ずしもそうではない。イオンは一見、拡大主義の権化のようだが、実は、基本原則を愚直に守って生き残ることで、結果として覇者となったというのが過去からの経緯なのだ。
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