東京駅で「売れ残り」救出、その効果は? 食品ロス対策に“企業間連携”が欠かせない理由:「食品ロス」削減への現在地(1/5 ページ)
東京駅改札内の店舗で、売れ残り商品を従業員向けに販売するサービスの実証実験が実施された。事業者にとっては、廃棄コストの削減や、欠品を出さないように商品を用意できるメリットがある。幅広い業界が関わる食品ロス対策には、企業や行政の連携が有効だ。
「食品ロス」削減への現在地
季節商品など、大量の廃棄が出る商品に対して厳しい視線が向けられるようになった。2019年10月には食品ロス削減推進法が施行。製・配・販に携わる事業者は、ロスをなくすための対策を掲げている。食べ物を余らせないようにするサービスなども出てきた。「もったいない」を巡る取り組みに迫る。
年間643万トン――。この数字は、まだ食べられるのに廃棄されてしまう「食品ロス」の量だ(2016年度)。店舗などの事業者からも、家庭からも、日常的にたくさんの食品が捨てられている。一方、この現状を問題視する風潮も強まっており、19年には食品ロス削減推進法が施行。制度・意識の両面で改革が始まっている。
だが、食品を扱う事業者にとって、ロスを出さないようにすることは難しい。生産や仕入れの量を減らしすぎると、欠品を起こしてしまうリスクがある。ITによって商品の需要を予測する技術も進歩しているが、予測しきれない気候の変化などもある。
そこで、食品ロスを減らしながら、そういったリスクも軽減しようとする新しい施策やサービスも出てきた。その一つが、店舗の売れ残りをシェアする取り組みだ。その仕組みの構築を目指して実施された、東京駅での実証実験を追った。
売れ残りを廃棄から“救う”新サービス
午後10時過ぎの東京駅。エキナカ商業施設「GRANSTA(グランスタ)」では、各店舗のシャッターが閉まっていく中、台車を押しながら慌ただしく店舗を回る人の姿があった。お店から運び出しているのは、売れ残った食品だ。
1月14日〜2月14日に実証実験を行った新しい取り組み「レスキューデリ」は、店舗で売れ残ったパンや弁当などを買い取り、東京駅で働く人たちに販売するサービス。店舗や駅施設で働く約8400人が、売れ残った食品を廃棄から“救う”役割を担う。実証実験の期間中、改札内で営業する6店舗が参加した。
この実証実験は、JR東日本スタートアップ、フードシェアリングサービス「TABETE(タベテ)」を運営するコークッキング、グランスタを運営する鉄道会館の3社で実施。JR東日本スタートアップが主催するアクセラレータープログラムでコークッキングのアイデアが採択され、実用化に向けて協業を進めてきた。
その背景には、食品ロスにまつわる課題がある。JR東日本スタートアップの佐々木純氏は「(店舗運営を担う)グループ会社からは『発注の自動予測ツールを使っても余ってしまうことがある』『売り切れてしまうとサービス低下になり、販売機会のロスになる』という声がある」と明かす。天候や季節の変化に合わせて商品の数を変更するが、そのタイミングを読むのもなかなか難しいという。
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