東京駅で「売れ残り」救出、その効果は? 食品ロス対策に“企業間連携”が欠かせない理由:「食品ロス」削減への現在地(3/5 ページ)
東京駅改札内の店舗で、売れ残り商品を従業員向けに販売するサービスの実証実験が実施された。事業者にとっては、廃棄コストの削減や、欠品を出さないように商品を用意できるメリットがある。幅広い業界が関わる食品ロス対策には、企業や行政の連携が有効だ。
廃棄コストが月5万円減った店舗も
利用者には好評だったようだが、店舗にとってメリットはあったのか。コークッキングの取締役COO(最高執行責任者)で、レスキューデリを担当する篠田沙織氏は「お店によっては、廃棄コストが月5万円減ったという声もある」と説明する。
店舗側の当初の懸念は「閉店後のオペレーションが増えてしまうこと」だった。売れ残ったパンなどを袋に詰める作業は店舗側の負担になる。しかし、実際に取り組んでみると、これまで発生していた“売れ残った商品を捨てる手間”を省くことができたため、新たな作業が大きな負担になったわけではなかった。通常よりも安い価格での買い取りにはなるが、廃棄コストを削減できることを考えると、メリットは大きいようだ。
実証実験に参加したベーカリー「BURDIGALA EXPRESS(ブルディガラエクスプレス)」の森藤真美店長は「毎日ごみ袋2つ分くらいは廃棄が出ていた。それがゼロになるのはうれしい」と話す。「作り手の気持ちを考えると売れ残りはゼロにしたいが、お客さまへのサービスの点ではぎりぎりまで残したい。安心して商品を用意できるのはありがたい」と、取り組みを評価していた。
店舗にとっては、新たな気付きのきっかけにもなった。当初は「売れ残りを買ってもらえるのか」と不安をこぼす店舗担当者もいたが、行列ができるほど盛況だったことからも、利用者の需要があることが分かった。コークッキングの篠田氏は「最初のころ、『バゲットは売れないと思う』などと、全部出してもらえないこともあった。でも、そういった商品も売れたことで、『まだ売れるんだ』という意識に切り替えてもらえた」と話す。
また、利用者からは「この店の商品を初めて食べた」「(営業時間中に)普通に利用したい」という声もあったという。日常的に東京駅を利用する従業員に対する認知度向上にもつながったようだ。
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