元国税専門官が教える確定申告の“裏技” 納税資金が用意できない場合の対処法:元国税専門官が教える『確定申告、得なのはどっち?』(3)(3/3 ページ)
今年も確定申告の時期が到来した。税金の仕組みは複雑で、「どっちが正解?」と迷うことが少なくない。だが1つ判断を間違うと、税金が高くなってしまうこともある。東京国税局に勤務していた元国税専門官が、こうした確定申告にまつわる迷いやすいポイントを3回に分けて解説していく。3回目は納税に関する “裏技”をお伝えする。
振替納税・クレジットカード納付の手続き
最後に、振替納税とクレジットカード納付の手続きについてお伝えします。
振替納税を利用するには、納期限の前に「預金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書(以下「振替依頼書」)」を所轄税務署に提出する必要があります。ここには銀行の届出印を押印することになるため、間違えないようにしましょう。
注意しておきたいのは、確定申告書にある銀行口座を書く欄は、振替納税とは関係ないという点です。こちらは還付金を受け取る口座を書くものですから、納税を行う場合はここではなく、振替依頼書に記載をしなくてはなりません。税務職員時代、この点を勘違いして未納になった人を何度か見たことがあります。
振替納税の手続きを一度しておけば、取りやめの手続きをしたり、他の税務署の管轄に転居したりしない限り、翌年分以降の所得税も自動的に指定の口座から落ちます。毎年納税のためにわざわざ税務署や金融期間などに出向く必要もなく、納税忘れを防ぐ意味でも、振替納税は役立ちます。
一方、クレジットカード納付を行う場合は、「国税クレジットカードお支払サイト」を通じて手続きを行います。振替納税のように事前の手続きは必要なく、オンライン上で必要事項を入力するだけです。
クレジットカード納付において注意すべきは、「決済手数料がかかる」という点。決済手数料の金額は、納付税額によりますが、納付税額10000円あたり、76円(税抜き)。消費税10%を加味すると、納税額に対する決済手数料の割合は約0.83%です。
クレジットカード納付を行うことで、クレジットカードのポイント還元を受けられる可能性がありますが、それ以上に決済手数料を取られてしまう可能性があるので、注意してください。
なお、口座引落日まで待っても納税資金を用意できそうになければ、納期限の前に税務署に相談しておきましょう。延納などの手続きを取ることで、未納状態になるのを防げるかもしれません。
また、新型コロナウイルスの影響により、令和元年分の確定申告や納税の期限は特別措置が取られています。2020年4月16日に期限が延長されている旨は説明しましたが、この日までに申告ができない場合、4月17日以後でも柔軟に期限を延長する旨が、国税庁から周知されています。
4月17日以後に確定申告をする場合は、提出する申告書の余白に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」といった文言を付記するだけで、確定申告と納税の期限が延長されます。この措置を利用する場合、申告書の提出日が納税の期限になります。申告と納税を1日で済ませる必要があるので、注意しましょう。
著者プロフィール
小林義崇(こばやし よしたか)
1981年生まれ、福岡県北九州市出身。埼玉県八潮市在住のフリーライター。西南学院大学商学部卒。2004年に東京国税局の国税専門官として採用。以後、都内の税務署、東京国税局、東京国税不服審判所において、相続税の調査や所得税の確定申告対応、不服審査業務などに従事する。2014年に上阪徹氏による「ブックライター塾」第1期を受講したことを機に、ライターを目指すことに。2017年7月、東京国税局を辞職し、ライターとして開業。Twitter、Webサイト。
著作に『確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える! 』(河出書房新社)。3月17日には『すみません、金利ってなんですか? 』(サンマーク出版)を発売予定。
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