「コスパ」ではない体験を 入社前に1年間の“海外武者修行” 矢崎総業の「アドベンチャースクール」が生まれた背景:これからのキャリアは「カニ歩き」?(2/3 ページ)
最近の学生は「コスパ」を求める。そう話すのが、矢崎総業の研修制度「アドベンチャースクール」を仕掛けるエフ・アイ・エーの金子詔一氏だ。昨今は学生、社会人問わず腰を据えて学習できる機会が少なくなりがちだ。そんな状況に一石を投じる「アドベンチャースクール」は入社前に、希望者に対して1年間の“海外武者修行”の場を提供するもの。他に例を見ないような珍しい取り組みは、いったいどのように生まれたのか。
1年間の海外武者修行、どんな制度か
アドベンチャースクールは、希望する内定者を入社前1年間、自らの希望する国へ派遣するもの。矢崎総業が公式Webサイト上で紹介するように「語学力、異文化対応力、創造力、チャレンジ精神を持ったグローバルな人材を育成する」ことが目的。英語学習や多文化体験というお題目はあるが、会社側が細かいプログラムを定めることはない。参加者は派遣先で、自ら課題を探し、見つけていく。単なる研修として終えるのではなく、少なくない金額のお金を稼ぐことに成功する参加者も過去にはいたという。
参加者の中には、帰国後に入社を辞退した人もいたとのこと。さらに、内定前の人が参加したい場合にも相談を受けるという“太っ腹”な制度だ。なお、入社してからでなく、あくまで「入社前」なので、給与は支給しない。ただ、渡航費や滞在費など、最低限の費用は会社側が負担するという。これまでに40カ国以上の国へ、1300人以上が参加した。
同制度は1993年に開始。当初は入社前に、希望者を募って海外で数週間のスキー旅行をする形式だったという。珍しい取り組みだったことから「来る人なんていないんじゃないかと思っていた」(担当者)と想定していたが、予想を上回る参加があったという。
そこで、対象を入社した人全員に広げ、さらには期間を「6カ月」に延長。会社に在籍しながら派遣すると、人件費の面で会社にとってハードルになることから、そのころから休職して参加する形にした。「6カ月」と「1年」のいずれかを選べるようにしたときもあり、そうすると当初は「6カ月」で参加する人が多かったが、期間が終わると「もっと残っていたい」と言い出す参加者も少なからずいたという。このような紆余曲折を経て、「入社前に1年」という今の形になった。
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