米国の新型コロナ“急拡大”で迫りくる「中国復活」の脅威:世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)
世界的に新型コロナウイルスの感染が拡大している。日本の経済活動において影響力が大きい米国でも、多くの州で非常事態宣言が出された。米国は今、どのような状況なのか。このまま感染拡大が続けば、先に復活した中国の力が増すことにもつながりかねない。
インバウンドやスポーツ、サプライチェーンにも影を落とす
冒頭でも少し触れたが、感染拡大を先に経験している日本では、さまざまな業界に経済的な悪影響が出ている。
最も深刻なのは、インバウンドにからむビジネスだ。これまで日本に大勢来ていた中国や韓国からの来日者の入国制限を実施していることから、観光客相手のビジネスは軒並み苦しい状況にある。ホテルやタクシー、さらに観光地の商売は深刻な状況に陥っているし、鉄道も乗客数が減少している。
また日本人向けでも、レストランや居酒屋、スポーツジムやカラオケのある飲み屋などで客足が途絶えるなど悲惨な状態にある。日本経済新聞によれば、宴席などを自粛している企業は8割に上り、6割の企業は出張を取りやめている。サッカーのJリーグやプロ野球などの人気スポーツも開催が延期され、大相撲は無観客で行われている。また子供が通う各種学校も休校になっており、授業料のキャンセルなど今後混乱が予想されている。
国外とのサプライチェーンにも支障が出ている。中国などから輸入される電子機器の部品や建築用の資材なども滞っており、日本企業が通常通りに仕事ができない事態も出ていると報じられている。さらに、就業ビザなどで長期滞在中の中国人や韓国人でも、入国制限などでビジネスがスローダウンしたり、延期したりするケースも少なくないだろう。また、日本から中国への輸出も受け入れが滞っていてビジネスにならない企業や、先にウイルスの影響を受けている中国企業の対応の遅れも日本企業に黒い影を落としている。
そしてこうした状況に加えて、次は米国のエピデミック(局地的な流行)が起きる可能性が否定できない状態にある。米専門家の中には、米国の現状はまだ「(野球で言うならば)第1イニングにすぎない」と言っている人もいる。また今後2年で世界の感染者数が「500万〜1000万人」になると見る人もいて(3月10日現在の感染者数は約11万人)、米国でも感染者は激増していくとの見方が出ている。AHA(米国病院協会)は、最悪の場合、感染者数は世界で9600万人に達し、50万人の死者が出る可能性があると予測している。
もっとも、米国の能力を考えれば、優れた医師や学者などを集めることで、確実に中国よりも優れた対策を行えるはずだ。だが国を率いるドナルド・トランプ大統領はその動きに決して積極的とは言えない。トランプは新型コロナの脅威を今も過小評価し、「正しく恐れよう」と促すメディアに対しては、フェイクニュースだと言わんばかりだ。ただすでにニューヨーク株式市場でも株価が急落しており、トランプ・リスクによって今後、さらなる大混乱を招くかもしれない。そうなれば、トランプ自身の大統領再選にも悪影響を及ぼすだろう。
国際的に広がるこのウイルスには世界各国が力を合わせて立ち向かうべきだが、トランプ政権はWHOへの供託金を、現在の1億2300万ドルから来年は5800万ドルに半減させようと動いている。そんな背景から、WHOが中国寄りの発言をしているとの批判すら出ている。
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