面接で「してはいけない質問」、知っていますか? 「思想・信条・宗教」だけではない、いくつものタブーとは:連載・あなたの会社は大丈夫? 求職者に「ブラック企業」と思われないために(3/4 ページ)
新卒採用のシーズンが始まった。採用面接では、求職者の人柄を知ろうと質問をする。しかし、何気なく質問してしまう事項でも、実は聞いてはいけないことがある。「思想・信条・宗教」はもちろんのこと、その他にもたくさん……。ブラック企業に詳しい新田龍氏が解説する。
経営者と同じレベルの努力を社員に強いようとする →いくら頑張っても、報われない会社だと判断される
多くの経営者にとっては「自分が好きで始めたビジネス」であるから、寝食を惜しまずハードに仕事をこなすのは当然のことであり、ビジネスの意義や会社組織に対する強烈な思い入れがあるのも当たり前だ。多くの人が口にする「苦しい時期があったから、今の成功がある」という考えにも一理ある。しかし、美しいその成功譚は、あなたと一般社員を隔てるものになりかねない。
そもそも、リスクを負って事業を興し、その分のリターンを得られる創業メンバーたちと、ある程度組織ができてから参加する一般社員では、価値観も、モチベーションを感じるポイントも、「これくらいやって当たり前というレベル」も違う。経営層はハイリスクでもハイリターンを期待したい「珍しい」存在であり、一方の一般社員はローリターンでもリスクは低減したい「普通」の存在であることがほとんどなのだ。
資質や能力の優劣ではなく、そもそもの価値観が違う、ということだ。その前提で接して、そこから徐々に期待をかけていくべきであり、面接の時点でいきなり経営者レベルを求めるのは筋違いだ。当然、過大な期待を寄せられる求職者にとっては「ロクに報いもせず、要求だけ厳しいブラック企業」と映るだろう。
面接官や企業側の対応に誠意がない/コンプライアンス違反をしている →顧客に対しても誠意がなく、法順守に無頓着といったルーズな雰囲気を感じ取る
求職者にとっては面接官が、その会社との基本的に唯一の接点である以上、その態度が会社の“在り方”を体現することになる。印象面のみならず、厚生労働省が発表している「公正な採用選考の基本」などでは、本人の資質とは関係ない条件で採用・選考の差別をすることは禁じられている。あなたの会社では、面接官が次のようなことをしてしまっていないだろうか。
- 面接官が事前に応募書類(職務経歴書など)を読んでいない
- 面接官の態度が横柄である
- 偏見、差別的、モラルを欠いた発言がある
3つ目の「偏見、差別的、モラルを欠いた発言がある」を詳説すると長くなってしまうのだが、「面接時に質問してはいけないポイント」がある。具体的には「本人の本籍地、出生地、生い立ち等」「家族の職業、勤務先、収入、地位、学歴、人柄、続柄等」「家庭の資産状況、家の所在地や環境等」「思想、信条、宗教、支持政党、尊敬する人物、愛読書(新聞、雑誌等含む)」「障害者差別、性差別、部落差別、外国人差別につながるもの」「本人の容姿、スタイル、服装」「その他面接と明らかに関係ない私的事項」だ。
特に「尊敬する人物」や「愛読書」などは何気なく聞いてしまいそうになるが、これらは全て法律などによって、「本人の資質とは関係ない条件で採用・選考の差別をすること」につながる恐れがあることから禁じられている。コンプライアンス上、避けた方が無難である。繰り返しになるが、求職者とのあらゆる接点において、企業側に何かしら誠意が感じられない対応があれば、それは企業そのものの誠意のなさと直結するだろう。重々ご留意頂きたい。
関連記事
- 元従業員による求人サイト不正アクセス・改ざんで“大炎上” Dr.ストレッチ加盟店運営企業社長が「辞任」へ
Dr.ストレッチのフランチャイズ加盟店が求人サイトで「残業代なんて出すわけがない」「有休消化は稼いでから言え」と記載して炎上した騒動。掲載した会社「つながり」だけでなく、Dr.ストレッチ運営元企業や、求人サイト運営企業まで飛び火した。3月12日夜、つながりがメッセージを発表し、社長は辞任する意向を表明した。 - フマキラーが新型コロナを巡る一部報道に対する“強い憤り”を発表 「3商品でコロナウイルス科の不活化に効果あり」と反論
フマキラーが、キッチン用エタノールを巡る一部報道に真っ向から反論している。既に3商品でウイルスの不活化実験をしており、新型コロナウイルスと同じ構造を持つウイルスに対して効果を確認済みとのこと。事前取材をせず、一部専門家の見解のみで「キッチン用エタノールはコロナウイルスへの効果が科学的に証明されていない」と結論付けたことにも疑問を呈している。 - 課長の平均年収は932万円、部長は? 外資との「格差」も明らかに
日本で活動する企業の報酬状況が発表。日系企業と外資系企業合わせて679社が参加した。調査結果では課長職や部長職の平均年収も明らかになった。日系企業と外資系企業の報酬格差も合わせて発表し、特に役職者以上で顕著な開きがあった。 - 「デスクでランチ」が多い会社はブラック企業!? そこかしこに潜む、「ブラック企業認定」のリスク
新卒採用のシーズンが始まった。企業は求職者に対して自社を良く見せようとしがち。しかし、何気ない日常にも「ブラック企業」と判断されるリスクが潜む。今回は、「企業説明会」や「会社訪問」について、ブラック企業に詳しい新田龍氏が解説する。 - 新型コロナでどうなる? コストコの試食、カルディのコーヒーサービス
影響を広げる新型コロナウイルス。カルディではコーヒーサービスを当面休止する。トイレットペーパーの小分け販売を開始したコストコの「試食」はどうなる?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.