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53年排ガス規制との戦い いまさら聞けない自動車の動力源 ICE編 2池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/5 ページ)

第1回に引き続き、内燃機関(ICE)の仕組みについて。今回はガソリンエンジンに話題を絞って、熱効率の改善と排ガス浄化がどう進んでいったかの話をしよう。まずは、そうした問題が社会で重要視されるまでは、どんなやり方だったのかというところから始め、排ガス規制への対応の歴史を振り返ってみたい。

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 ホンダは、主燃焼室に薄い混合気を、タコツボのような副燃焼室に濃い混合気という具合に濃度の違う2種類の混合気を導き、トータルでは薄い、つまり希薄燃焼させることに成功した。

 副燃焼室で着火された火炎流が、細い通路を通って高速で主燃焼室に吹き出し、火炎流が薄い混合気をかき回しながら燃え広がる仕組みを作った。これがCVCC(複合渦流調速燃焼方式)である。独自の技術で「燃焼室での燃焼」の段階で問題を解決した優秀な技術だった。


ホンダは、独創的な副燃焼室を使った複合渦流調速燃焼方式(CVCC)によって、一躍世界からの脚光を浴びた

ホンダのCVCCシステムの作動図。左から、まずは黄色の濃い混合気と青の薄い混合気をそれぞれ副燃焼室と主燃焼室に導く。次に着火しやすい濃い混合気に副燃焼室で火花着火。燃焼で膨張した火焔流は、すぼめられた通路から主燃焼室に強い渦を作り出しながら噴出し、薄い混合気を火焔伝播に頼らずに一気に燃やす

 ところが1973年にオイルショックが勃発して、省エネという新たな課題が加わってしまった。当時は休日のガソリンスタンドの営業を停止させるほどの緊急事態で、輪番制の限られたスタンドしか営業していない状態だった。

 そうなると、サーマルリアクター方式は燃費面で立ち行かなくなる。そもそもトヨタと日産という当時の両巨頭の対策エンジンは、ドライバビリティ的にも酷い(ひど)有様で、「危険なほど遅い」といわれたトヨタのTTC-C(Toyota Total Clean System)や日産NAPS-Z(Nissan Anti Pollution System)は、結局アクセル全開領域を多用することになって実用燃費が悪かった。

 ホンダはCVCCで希薄燃焼を成し遂げたため、この排ガス対策と省燃費の複合競争の勝者になったかに見えたが、技術トレンドが変わり、やがて時代の波に消えていった。


トヨタと日産は排ガスへの対策で後手に回り、ホンダ、マツダ、スバルに先を越された

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