コロナショックで上場企業は今期9.3%減益 4〜6月期に収束なら来期はほぼ全業種が回復の見通し
コロナショックの影響は――。3382社が対象となる20年1月期〜12月期の予想営業利益は、製造業が前期比9.9%減、非製造業も同9.7%減、全産業(銀行、保険を含まず)では同9.3%減という見通しになった。
2019年から続く米中貿易摩擦や増税、さらに新型コロナウイルス(COVID-19)が追い打ちとなり、上場企業の業績に減速感が強まっている。東洋経済新報社は、「会社四季報」(以下、四季報)の記者が全上場企業に対して取材。今期および来期の業績予想を見直し、数字を検証した。
その結果、3382社が対象となる20年1月期〜12月期の予想営業利益は、製造業が前期比9.9%減、非製造業も同9.7%減、全産業(以下、銀行、保険を含まず)では同9.3%減という見通しになった。19年12月発売「四季報」新春号の集計値と比較すると、全産業の利益は6.2%の下振れとなった。
下方修正の度合いは、製造業の4.6%に対し、内需型企業が多い非製造業で8.4%と大きく差がついた。サービスや空運、陸運、小売りなどでは、コロナ・ショックによるインバウンドの減少、イベント自粛などの需要後退、消費マインドの悪化が業績を下押す動きも目立つ。
業種別にみると、銀行、保険を除く31業種の中で、今期予想の営業増益は半数以下の13業種だった。そのうち、増益率が2桁と好調なのは、海運、鉱業など8業種。一方、営業減益と予想される18業種のうち、2桁減益は9業種と半数を占めた。
市場別に決算実績および業績予想を集計したところ、今期の予想営業利益は1部市場が前期比10.3%の減益だった。これに対して、JASDAQは0.4%増、新興市場は11.8%増と増益をキープした。2部市場では、東芝の営業増益かつ純利益の減益の見通しが影響し、営業利益は96.8%増益、純利益は79.1%の減益となっている。
「四季報」では、「影響は4〜6月期までは続くものの、その後は多くの会社で企業活動が正常化に向かう」としている。その場合、来期はほとんどの業種で業績が持ち直し、全産業で9.9%と2桁近い利益になると予想している。
そのうち、電気・ガス以外の30業種全てが増益予想となった。電気機器の23.1%増を筆頭に、情報・通信、石油・石炭製品、医薬品、サービス、証券、精密機器の7業種が2桁増益となる見通し。
しかし、全世界では依然として新型コロナウイルスの感染拡大が進んでおり、収束の見通しは専門家によっても意見が異なる。景気回復の期待を持ちながらも、コロナ・ショックの長期化に備えて対策を講じたい。
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