「愛」と「恋」はなぜ書きにくいのか? 知られざる毛筆フォントの世界:水曜インタビュー劇場(文字公演)(5/5 ページ)
街中を歩いていると、毛筆フォントを目にすることが多い。店の看板や商品のラベルだけでなく、家に帰ってテレビをつけるとテロップでも流れてくる。実際に書かれたような毛筆フォントは、どのようにしてつくられているのか。フォント事業を手掛けている「昭和書体」の社長に話を聞いた。
「絵を描いている」感覚
土肥: 祖父の綱紀さんが書かれている姿を見ていると、書道の世界とはかなり違いますよね。書道の場合、筆は立てて書かなければいけませんが、綱紀さんは寝かせています。しかも、とてもゆっくり書く。
坂口: 筆の根元も使って書くので、書道とは全く違います。テーブルの上をよーく見ていただくと、修正ペンがありますよね。修正ペンを使いながら、何度も二度書きをする。文字でハネるところも、あとでつけるんですよね。本人に聞いたところ「文字を書いているといった感覚はなくて、絵を描いている感じだ」と言っていました。
土肥: 30年以上前の話になるのですが、ワタシが通っていた高校の美術の先生が「ワシの夢は、教え子を看板屋にさせることだ」と言っていました。当時、映画の看板などは職人さんが描いていましたので、「絵の上手な人が看板屋で働くんだろうなあ」と思っていましたが、看板に書かれている文字は書道が得意な人が書いているのかと思っていました。
坂口: いえ、看板に書かれている文字も、職人さんが書いていました。祖父も看板職人として文字を書いていたので、いまフォントの仕事をしていても「絵を描いている」といった感覚になるのではないでしょうか。
土肥: 看板職人として培った技術がフォントの世界でも、生かされているわけですね。ちなみに、普段の文字はどんな感じですか? やはり、達筆ですよね。
坂口: いえ、それがそうでもなくて。えんぴつやボールペンで書いた文字を見ると、「達筆」どころか「上手」とも言えません(汗)
土肥: 筆を使って上手に書いているのに……それって“フォント”ですか?(←言いたかっただけ) 本日はありがとうございました。
(終わり)
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