飲食店でタバコを吸えなくなっても、“開き直りおじさん”が増える理由:スピン経済の歩き方(2/6 ページ)
4月、改正健康増進法が全面施行される。これによって、飲食店などでも原則禁煙になるわけだが、筆者の窪田氏はちょっと気になることがあるという。愛煙家を追い込むことによって、「開き直り喫煙おじさん」が増えるというのだ。どういう意味かというと……。
禁煙者は増えるのか
という話をきくと、嫌煙家のみなさんは、「いやあ、よかった、よかった、さすがに自分の命も危ないとなれば、たばこをやめる人が増えていくだろう」と思うかもしれないが、個人的には、禁煙に流れる人よりも、「こうなったら絶対にやめねえ」と逆にこれまで以上にガンコになってしまう人のほうが多くなるような気がしている。
つまり、道でスパスパ吸ってそのへんにポイッと捨てたり、喫煙禁止の場所で「なにみてんだ、コラ」と周囲を威嚇(いかく)しながら一服する「開き直り喫煙おじさん」が増えていくのだ。
なぜそんなことが言えるのか。まず大きな理由としては、喫煙者のほとんどが、自分を理不尽な規制で虐げられる「被害者」だと思っている、という動かし難い事実がある。18年8月、小売事業者向けのマーケティング支援を手掛けるプラネットの調査では、喫煙者804人に禁煙の意思があるかを聞いたところ「禁煙の予定はない」(53.7%)と回答した人たちが半数を超えて最も多かった。
その理由を尋ねたところ、トップは「自分にとってのリラックスタイムだから」(54.6%)。2位は「自分の生活スタイルだから」(49.3%)、3位は「気分転換になるから」(47.7%)という声が圧倒的に多かった。要するに、喫煙者にとってたばこを吸うことは、自分の生き方を貫くとか、自分の心の平静を保つなど、あくまで「自分」の問題なのである。
だから、非喫煙者側が主張する「体に悪い」「受動喫煙やポイ捨てなど周囲に迷惑」という言葉がまったく響かない。むしろ、「自分」の問題になぜアカの他人がクビを突っ込んで、いろいろと理不尽な要求をしてくるのだ、と軽い殺意を覚えているのだ。
こういう「被害者意識」の強い人たちにいくらWHOや医学論文がふれまわっている「喫煙者は新型コロナで重症化リスクがある」なんて話を届けたところで、「自分を変えてまで長生きしたくないよ」とか「人間、死ぬときは死ぬんだよ」と開き直ってしまうのは容易に想像できよう。
ましてや愛煙家には、「たばこで肺がんになるって話は実はエビデンスがないんだよ」と大真面目な顔で語るような方も多く、根強い医療不信がある。そもそもこのような「警告」に聞く耳すらもたない可能性が高いのだ。
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