飲食店でタバコを吸えなくなっても、“開き直りおじさん”が増える理由:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
4月、改正健康増進法が全面施行される。これによって、飲食店などでも原則禁煙になるわけだが、筆者の窪田氏はちょっと気になることがあるという。愛煙家を追い込むことによって、「開き直り喫煙おじさん」が増えるというのだ。どういう意味かというと……。
社会の中に「喫煙者の逃げ場所」を
先日、アルコール依存症や薬物依存症の方たちからお話を聞く機会があった。そこで彼らが口をそろえるのは、周囲から「酒をやめろ」「クスリをやめろ」と強く言われれば言われるほど、「絶対やめねえ」と意固地になって依存症が悪化したということだ。医者に言わせれば、喫煙者も「ニコチン依存症患者」である。ということは、同様の問題が起きる可能性は高い。
つまり、規制を厳しくしたり、健康に害を及ぼすという啓発をしたりすればするほど、「絶対やめるか」と開き直って、迷惑な吸い方やポイ捨てをする喫煙者が増えてしまうのだ。
屋内を禁煙することは受動喫煙防止の観点からも必要だ。個人的には、分煙など中途半端なことではなくすべて一律で禁煙にすべきだと思う。しかし、テラス席や店の前などにはある程度、喫煙できる自由を与えるべきだ。
喫煙者も人間だ。一方的に自由を奪われた人間は、奪った者たちへの憎しみしか生まれない。憎しみが「テロ」など新たな対立を生むということを、我々は歴史から学んでいる。新型コロナや屋内禁煙規制の影響で、喫煙にさらに風当たりが強くなる今だからこそ、社会の中に「喫煙者の逃げ場所」をつくる必要があるのではないか。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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