「人材派遣」は“不遇な働き方”は本当か? データと資料が解き明かす、知られざる実態と課題:連載・「人材サービス」が滅ぶ日は来るのか?(3/7 ページ)
2019年、就活サイトの内定辞退率問題で注目を集めた「人材サービス」だが、今その公益性が問われている。しかしながら、ひとくちに「人材サービス」といっても、その実態はなかなか分かりづらいのが現状だ。今回は、誤解の多い人材派遣について「人材サービスの公益的発展を考える会」を主催し、「人材サービス」に詳しい川上敬太郎氏が解説する。
全雇用者のうち、派遣の割合はわずか
そして、15年の派遣法改正によって正社員がゼロになるという主張については、5年たった今も全雇用者の約6割が正社員であることから、間違いであることは一目瞭然です。そもそも、雇用者全てが派遣社員になるというのは考えにくいことです。先ほど派遣社員は非正規と呼ばれる雇用形態の6.5%と説明しましたが、19年の全雇用者(役員含む。労働力調査基本集計の表記に準ず)である「6004万人」に占める割合で考えると2.3%まで比率は下がります。
過去を振り返ってみても、派遣社員が全雇用者の3%を超えたことは一度もありません。その事実を知っていれば、被雇用者が全て派遣社員になる、というのは非現実的であることが分かります。しかしながら、人材派遣事業に携わったことのない方に、過去何十回も「派遣社員は全雇用者の何%くらいを占めていると思いますか?」と尋ねてみましたが、「3%未満」と回答した人は1人もいませんでした。ほとんどの人が20〜60%くらいと答え、最も多く返ってきた回答は「30%」でした。
繰り返しになりますが、派遣社員という形態は、3%に満たない、比較的マイノリティーな働き方なのです。そんな派遣社員が、統計として労働力調査の項目に登場するのは1999年。労働者派遣法が施行され事業として正式に認められたのは、1986年までさかのぼります。現在のような「人材サービス」として人材派遣業が行われるようになったのは、さらに20年前の1966年、米国のマンパワーグループが日本に法人を設立したことに始まるといわれています。
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