STOと併せて注目のステーブルコイン Fintech協会 落合氏、神田氏インタビュー:フィンテックの今(3/4 ページ)
既存通貨に連動(ペッグ)などして、価格安定を目指すステーブルコインに注目が集まっている。どんな特徴を持ち、金融サービスにどんな影響を与えるのか。
――これからのステーブルコインとしてLibraに対する注目度は高いですね。
神田 Libraは、各国の主要な国の法定通貨をバスケットのような形で参照するというアイデアが面白いと思います。もちろんこれは別に突飛なアイデアではありません。例えばIMF(国際通貨基金)が、加盟国の準備資産を補完するために創設した特別引き出し権(SDR)や、ユーロの前身である欧州通貨単位(ECU)も当初は同様の考え方のもとで組成されました。
Libraは、国ではなくFacebookという民間の大企業が、信用とかユーザー規模の大きさをバックグラウンドとして同様の取り組みをしようとしている点が面白いし、現実的にあり得ると感じています。だからこそ、当局も現実的な問題として議論しているのでしょう。
落合 Libraは特定の通貨だけにペッグするわけではないので、米ドルやユーロなど、現在の法定通貨の変動をなるべく平準化するという考えで設計されています。Libraのホワイトペーパーには、新興国の金融サービスを利用できないでいる人たちに金融サービスをつなげていくと記されており、理念としてはフィンテックの一般的な考え方を共有しているといえるでしょう。
――一方で、懸念点も指摘されています。
落合 Libraは、主体となっているFacebookが個人情報に関する問題を複数起こしているなど、必ずしも運営体制に対する信頼が高くありません。さらに次のような点が懸念点として指摘されています。
- Libraの発行によって集まる個人情報を、本当に適切に管理できる仕組みを作り、運用するのか。
- ステーブルコインとはいっても、価値が永遠に変わらないということはないですし、このようなことも含めてさまざまなリスクをユーザーにきちんと説明できているのか。
- 金融機関なども加盟しているLibra協会が運営しますが、本当に適切なガバナンスを効かせることができるのか。
- 証券規制との関係をどう整理するのか。マネーロンダリングやテロ資金の対策をどう進めるのか。
- Libraの場合、身分証明書を持っていない人がユーザーとなり得ますが、どうやって本人確認するのか。
- 租税回避や金融犯罪に使われた場合に対処できるのか。
- Libraをコントロールしきれずに、最終的に金融政策に悪影響が及ぶのではないか。
神田 Libraに対して多くの懸念があるのは確かでしょう。ただ、発行体にいろんな問題があったり、発行体自体がなくなったりしたとしても、使い勝手がよければユーザーに支持されて流通し続けるという性質が通貨にはあります。
歴史的には、中国の王朝が発行した北宋銭は信用力が高く、日本でも流通しました。面白いのは、北宋が中国で滅びた後でも日本では使われ続けたと言われていることです。現状、グローバルな決済には高い手数料がかかります。また、新興国は自国の通貨の信用がないためドルを使うコストが高いだけでなく、そもそも銀行口座がないとドルにアクセスすらできません。そういう現状のデメリットがある人に対してLibraが提供された時に、Libraが抱える問題を超えて受け入れられるのか、そこが非常に大きな注目点だと思っています。
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