STOと併せて注目のステーブルコイン Fintech協会 落合氏、神田氏インタビュー:フィンテックの今(4/4 ページ)
既存通貨に連動(ペッグ)などして、価格安定を目指すステーブルコインに注目が集まっている。どんな特徴を持ち、金融サービスにどんな影響を与えるのか。
――現在、各国はステーブルコインに対してどのように対応しているのでしょう。
落合 中国やインドは仮想通貨をそもそも禁止するというスタンスなので、民間が発行する前提でのステーブルコインの議論を発展させるのは難しいでしょう。欧米は国によって整理が異なっています。
また、こうした民間に対する規制とは別に、各国当局は今ある法定通貨をどうデジタル化するかという議論もしています。こちらについては中国も非常に積極的です。
今後、ステーブルコインを国際的に使えるようにするのであれば、各国での法令実務に関する協調を進める必要があるでしょう。例えば犯罪に利用されたときの対応もありますし、情報の国際的な利用や、法執行等の協力体制については国際的な枠組みを作っていくことが求められます。また、日本国内という観点で見た場合にも、国がステーブルコインに対する規制の指針をある程度示した方が発行しやすくなるでしょう。
神田 実務的にはステーブルコインの価格が変動する中で、どう会計的に処理するのかといった点も整理が必要でしょう。日本ではそもそも、仮想通貨交換業者が登録制で、当局に認められた通貨しか取り扱えません。金融庁がどういうステーブルコインを認めるかが実質的なガイドラインのようになっていくと考えられるため、注目しています。
――今後、ステーブルコインは暗号資産(仮想通貨)と比べ、送金手段など幅広い用途で使われていくのでしょうか。
神田 暗号資産は、送金手段としては価格変動の大きさがデメリットでした。ステーブルコインはそれを安定させるというメリットが着目されるでしょう。ただ、暗号資産同士の取引の媒介としてならば、自分がステーブルコインの価値を信用していれば使いますが、送金の場合は受け取る相手もステーブルコインを信頼している必要があるため、ハードルはより高くなります。価格の安定度や信頼度について幅広い人たちが認識するようになって初めて送金手段として広く使われるようになると思います。
今年はセキュリティー・トークン・オファリング(STO)が解禁されます(3月11日の記事参照)。例えば不動産の証券化でセキュリティー・トークンが発行されて使われるようになれば、その取引の決済に法定通貨よりも円建てのステーブルコインの方が使い勝手がいいというケースが出てくる可能性があります。日本でステーブルコインが受け入れられるかどうかはSTOがどういう用途でどう使われていくのかということと併せて見ていく必要があると思います。円建てのステーブルコインが取引され、その過程で利便性が認められるようになれば日本でも広がっていくと期待しています。
識者プロフィール:落合孝文 (渥美坂井法律事務所・外国法共同事業 パートナー弁護士)
慶應義塾大学理工学部数理科学科卒業。同大学院理工学研究科在学中に旧司法試験合格。森・濱田松本法律事務所で約9年東京、北京オフィスで勤務し、国際紛争・倒産、知的財産、海外投資等を扱った。近時は、金融、医療、不動産、MaaS、ITなどの業界におけるビジネスへのアドバイス、新たな制度構築などについて活動を行っており、政府、民間団体の様々な検討活動にも参加している。2015年より一般社団法人Fintech協会分科会事務局長、2019年11月に同協会理事に就任。
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