ベルリン、厳戒ロックダウン下の働き方:2日でシステム用意、即座に5千ユーロ助成金振り込み(5/5 ページ)
3月末から日本よりはるかに厳しいロックダウン環境下にあるドイツ、ベルリン。ベルリン在住の筆者が、フリーランサーへの素早い助成金支給や、テレワークを業務の根本に据えるドイツのスタートアップの職環境について、現状を解説する。
情報整理、業務フローの統一などの、ドイツ流『ルールの徹底』
「18年の創業以降、弊社は事務所スペースを持っていません。共同代表の永井さんもビーレフェルトというベルリンから300キロほど離れた都市に住んでいるので、テレワークかつフレックスタイムで業務を構築することを前提にスタートしました。
これはドイツ的な働き方から影響を受けたものでした。私がベルリンのとある設計事務所に勤めていたころ、チームメンバーが何週間も休暇をとったり、半年や一年で入れ替わったりするにもかかわらず、滞りなくプロジェクトが進行できる状況を目の当たりにしました。どこの会社にもある社内サーバとメールだけで、そのような働き方が実現できていたんです。
その背景には、日本では考えられないレベルでの情報整理、業務フローの統一などの、ドイツ流『ルールの徹底』がありました。そのことから、『ドイツ的な仕組みづくりとルールの徹底』と『ITへの高いリテラシー』を持てば、全てがリモートで行える組織を作れると考えるようになりました。
現在は弊社の社員に加え、自身の事務所を構えて日本やドイツ各地で活躍している建築士、ライティングデザイナーやガーデンデザイナー、模型製作、カメラマンやグラフィックデザイナー、プログラマーなど専門性の高いアソシエイトのみなさんと、プロジェクトごとにチームを組んで一緒に仕事をしています。
Wrike、Zoom、BIMCloud、BOXなどを利用して、時差や物理的距離を感じないスピード感で各プロジェクトを進めています。近年はリアルタイムレンダリングソフトとVRメガネを連動させ、日本とドイツの設計者たちが同じ仮想空間を体験しながら、室内環境や問題点を早期に発見できる新しい設計手法にも挑戦しています。
ドイツでは3月17日から一斉に学校や幼稚園が閉鎖となり、多くの人々が自宅でテレワークをしています。ドイツですら、テレワークベースの働き方への移行は、多くの企業で混乱を発生させたようです。私は普段から幼稚園への子供の送り迎えなどに合わせて、自宅でフレキシブルに働いてきましたが、現在は妻と交替しながら子供と生活しています。これは、職住融合できる住環境には何が本当に必要か、建築士として建築的要素を見直すきっかけにもなっています。
テレワークとは、単なるワークスタイルの一種ではなく、ライフスタイルそのものであると考えています。個人に合った働き方の選択肢があることで、そこから生まれるQOL(Quality of life)により生産性も上げられると考えています。そして、新しい働き方を実現するためには、先進的なツールやITに加え、それを使う人の思想やマインドセットが鍵となると考えています」
今回、取材したベルリンの企業2社とも「sustainable=持続可能」をキーワードとしていて筆者は驚いた。“長持ち”する社会づくりのために、私たちは私たちの働き方、暮らし方を“長持ち”させることができるか? コロナ危機は、私たちにそれを問いかけている。
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