オンライン教育「周回遅れ」の日本 “コロナ休校”で広がる、埋められない空白:世界を読み解くニュース・サロン(5/5 ページ)
新型コロナウイルスの影響で休校が続く各国では、オンライン教育の提供が進んでいる。PCやルーターなどを無償提供して環境を整え、通常通りの時間割でオンライン授業を実施している国もある。日本も「教育の空白」を広げないための方向性を示すことが必要だ。
「教育の空白」をつくらない方向性を
最近では、文部科学省が教科書をネット公開すると発表したり、総務省主導で通信会社が通信料を割引すると決めたり、低所得世帯にモバイルルーターを貸与すると発表したりしているが、実施にはまだ時間がかかりそうだ。こうした個々の取り組みは素晴らしいが、省庁を超えたところからビジョンを示して、それに省庁が対応していくという進め方でないと、縦割りで知られる日本ではなかなか物事は大きく動かない。
また日本の電気機器メーカーなども、この機会にこそ、学校にタブレットのようなデバイスを無償または安価に提供することで、メーカーや製品に馴染んでもらうというのも長期的に見れば有効かもしれない。そういう動きも見てみたいものだ。
まず政府がイニシアチブをもって、国難に直面する日本の教育の方向性をはっきりと示す必要がある。何を目指し、どんな資金援助をするのか。さもないと自治体はどこに向かっていいのか迷いが生まれ、オンライン教育の実行に手間取ることになる。
それで教育の空白ができて影響を受けるのは、国の未来を率いていく子供たちにほかならないのである。
筆者プロフィール:
山田敏弘
元MITフェロー、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)がある。テレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。
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