新型コロナ危機、ANAと日産の融資申し込みはどうなる? 政府は大企業、中小企業支援で今何をするべきなのか:危機が迫る「経済の大動脈」(3/5 ページ)
新型コロナの経済影響が長期化・深刻化している。このまま続けば、大企業の破綻によって連鎖倒産が引き起こされる可能性もありえる。筆者の大関暁夫氏は、特に航空業界と自動車業界が危険だと指摘する。
右肩上がりだったANAだが……
今、より苦しいのは日本航空よりも業界2位のANAです。同社は右肩上がりの一見順調な業績推移を描いていましたが、20年3月期決算では黒字こそ確保したものの純利益で75%の大幅な減益となりました。3月期決算で大きく新型コロナの影響が出たのは、せいぜい3月の1カ月でしょう。その観点からは、これからが本当の正念場といえます。と言うのも、同社は日本航空の破綻を機に一気にライバルに追い付けと国際線を増強し、航空機および人員を大幅に増やすなどの拡大路線をとってきたからです。
その拡大路線の陰にはばく大な投資があり、経営破綻で債務が大幅に減免された日本航空と比べると、現状負債が5倍超にまで膨張しているのです。手元のキャッシュは約3000億円ありますが、固定費に加え借入返済やリース料支払いなどの投資負担で毎月約1000億円のキャッシュが流出する状態にあり、手持ちキャッシュは単純計算で3カ月分です。
同社の業績を勘案すると、平時であれば手元資金3カ月でも問題ないとは思いますが、現在は新型コロナ禍の有事です。しかも航空業界は他の業界と違って仮に国内の新型コロナ危機が収束に向かったとしても、他の国々の状況次第では早期に元通りの需要に戻るというものではなく、徐々に段階を踏んで路線再開、客足の回復に向かうと考えられます。すなわち、現状3カ月分というANAの手元資金では到底心もとなく、できればこの先1年程度の長期を見通した資金確保が必要になっているのです。こうした背景もあってか、ANAは現在、金融機関団に1兆3000億円という莫大なコミットメントライン(融資枠)契約の申し入れをしています。
自動車業界では日産が苦境
航空業界と並んで気になるのは、日本経済の底支え役ともいえる自動車業界です。やはり大手数社は巨大企業かつ代えのきかない存在であり、その裾野も広くどこか1社がおかしくなればそれは日本経済を揺るがす事態になります。現状もっとも不安が伝えられるのは、業界3位の日産自動車です。新型コロナの震源地である中国湖北省の主力合弁工場がいち早く稼働停止となり、その後欧州、米国さらに国内工場も相次いで操業を停止。この状況は業界共通の問題ではありながら、日産自動車は昨年来“ゴーンショック”の後遺症とゴーン時代の過剰投資による業績不振にあり、そこに新型コロナショックが追い打ちを掛けました。新型コロナの影響を折込前の2月に850億円に下方修正された3月期の営業利益は、1000億円近い赤字に転落見通しとさらなる大幅な変更を公表しています。
同社のキャッシュフローは、19年12月時点で約1兆2000億円。加えて5000億円の融資枠を確保してはいますが、業界トップのトヨタが6兆円のキャッシュフローを持ちながらも3月に新たに1兆円の融資枠を早々に成約したことと比べ、事業規模に照らして貧弱な状況は否めません。そこで日産自動車は新型コロナ危機による影響の長期化に備えて手元資金の充実をはかるべく、取引金融機関に5000億円の新規融資打診を現在かけています。
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