ホリエモンが北海道で仕掛ける「宇宙ビジネス」の展望――くだらない用途に使われるようになれば“市場”は爆発する:「世界一の環境」が埋もれてしまっている(3/3 ページ)
ホリエモンこと堀江貴文氏が出資する北海道大樹町の宇宙ベンチャー、インターステラテクノロジズが5月2日に予定していた小型ロケット「MOMO5号機」の打ち上げを延期した。延期は関係者にとっては苦渋の決断だったものの、北海道は引き続き宇宙ビジネスを進めていく上で優位性を持っており、期待は大きい。そのことを示したのが、2019年10月に札幌市で開かれた「北海道宇宙ビジネスサミット」だ。登壇したのは、同社の稲川貴大社長と堀江貴文取締役、北海道大学発ベンチャーのポーラスター・スペースの三村昌裕社長、さくらインターネットの田中邦裕社長、北海道大学公共政策大学院の鈴木一人教授。
北海道発の宇宙ビジネスが持つ可能性
最後に、北海道で宇宙ビジネスを展開する利点や、将来のビジョンについて意見が交わされた。稲川氏は、ロケット事業は土地に根差し、関連産業が集まるとして、今後集約していくのは間違いないと話した。三村氏は、北海道が日本の耕地面積の4分の1を占めていることから、病害をいかに早く見つけるかといった点では非常にいい実証フィールドになっていると説明。北海道で得られたデータの蓄積や分析の手法を知的財産に変えていきたいと意気込みを語った。
田中氏は、北海道にインターネットのサーバを置くと、温度が低いために冷却代がほとんどかからず、他の土地に比べて半分の電力で動かせるメリットを紹介。鈴木氏は、ロケットを作る、衛星を作る、データを活用する企業が同じ場所に集まっている点では、北海道は世界でもまれな環境だと指摘し、この動きが進むとアイデアが共有されて新しい付加価値や刺激が生まれてくると期待を述べた。
90分間にわたる議論は白熱し、登壇者と参加者が北海道の宇宙ビジネスの可能性を共有する場となった。堀江氏は、すでに大樹町には当初の予想を超える大勢の人が訪れていると実感を述べ、いま北海道で宇宙ビジネスに飛び込むことは得だと結論づけた。モデレーターの佐藤氏も参加者に「みなさんにも宇宙ビジネスに面白い人を誘うゲートウェイのような役割になってもらえれば、北海道はもっと盛り上がると思います」と呼びかけて、カンファレンスは幕を閉じた。
著者プロフィール
田中圭太郎(たなか けいたろう)
1973年生まれ。早稲田大学第一文学部東洋哲学専修卒。大分放送を経て2016年4月からフリーランス。雑誌・webで警察不祥事、労働問題、教育、政治、経済、パラリンピックなど幅広いテーマで執筆。「スポーツ報知大相撲ジャーナル」で相撲記事も担当。Webサイトはhttp://tanakakeitaro.link/。著書に『パラリンピックと日本 知られざる60年史』(集英社)
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