新型コロナで苦渋の決断――ホリエモン出資の宇宙ベンチャー・インターステラ稲川社長が“打ち上げ延期決定前”に明かしていた「人材育成と成長戦略」:大樹町の要請で打ち上げ延期(6/6 ページ)
北海道大樹町の要請によって延期になった国産小型ロケット「MOMO5号機」の打ち上げ――。ホリエモン出資の宇宙ベンチャー・インターステラテクノロジズは同機の打ち上げを、宇宙事業が「実験」から「ビジネス」に進化する転換点と位置付けていた。ITmedia ビジネスオンラインは4月20日の時点で稲川社長に単独インタビューを実施。同社が進める人材育成、今後の成長戦略についてのビジョンを聞いていた。延期とされた5号機の打ち上げが、同社や日本の宇宙産業にとっていかなる意味を持っていたのかを問い掛ける意図から、その一問一答を掲載する。
打ち上げ延期が及ぼす深刻な打撃
以上が稲川社長へのインタビューの内容だ。ISTとしては無観客などの対策をして打ち上げに臨もうとしていたものの、「多くの観客が来るかもしれない」という住民の不安を理由として、大樹町から強い口調で延期要請を受けたことは冒頭でお伝えした通りだ。
冷静に考慮すべきことは、ISTのロケット開発と打ち上げが「イベント」ではないわけであって、北海道による自粛要請の対象になっていなかったことだ。例えば国内では5月21日に種子島宇宙センターでJAXAによるH−IIBロケット9号機の打ち上げが実施されるほか、米国でも4月に1本、5月には2本の打ち上げが予定されている。ただし大樹町は「住民の不安」を理由として延期を要請し、実際に延期されてしまった現状では、次にいつ打ち上げができるのか不透明な状況だ。延期要請が、数値など明確な根拠に基づいた判断でなかったことは、今後の事業活動にとって懸念材料ともいえる。
そして気になる点は、ベンチャー企業であるISTの体力がどこまで持つかだ――。
稲川社長は28日の会見で、「開発系の会社は1人雇用して月100万円かかる。社員が40人なのでひと月あたり4000万円の活動費がかかっている」と明かし、先行きが不透明な状態での延期要請は「数カ月の事業活動をやめろと要請されていることと同じ」と語っていた。しかも、今回の延期要請にあたって、休業補償などのサポートは現時点では得られていない。
ISTは大樹町と前向きな協議を再開するとともに、5月2日から緊急支援のクラウドファンディングを開始して、「MOMO5号機」打ち上げの仕切り直しと事業継続に向けての打開策を探っている。
著者プロフィール
田中圭太郎(たなか けいたろう)
1973年生まれ。早稲田大学第一文学部東洋哲学専修卒。大分放送を経て2016年4月からフリーランス。雑誌・webで警察不祥事、労働問題、教育、政治、経済、パラリンピックなど幅広いテーマで執筆。「スポーツ報知大相撲ジャーナル」で相撲記事も担当。Webサイトはhttp://tanakakeitaro.link/。著書に『パラリンピックと日本 知られざる60年史』(集英社)
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