コロナ不況に「がんばれ日本!」が、まるっきり逆効果になってしまうワケ:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
新型コロナの感染拡大を受けて、自粛生活が長引いている。そんな中で、「がんばれ!」という言葉をよく耳にするようになった。「がんばれ、もう少しの辛抱だ」「気を緩めてはダメ、がんばれ」といった文言が多いが、こうした傾向に対して、筆者の窪田氏は警鐘を鳴らしている。どういうことかというと……。
変えるには考え方を変える
「ブラック企業」ほど精神論を振りかざす傾向がある。具体的な仕事のやり方を示さずに、とにかく「がんばれ」「人として成長したくないのか」「仕事を通じて人間力を磨いてほしい」なんてガンバリズムで社員を鼓舞する。そして、社員が血反吐を吐きながら結果を出したら、「みんながんばったな、でもまだ気を緩めるなよ」なんてさらなる「がんばり」を要求するのだ。
残念ながら今の日本社会は、ブラック企業と丸かぶりだ。アフターコロナでガンバリズムを続けていたら、コロナに感染する前に我々は低賃金と過重労働でつぶれてしまうだろう。
ちなみに、日本人が大好きな「がんばれ日本!」という言葉は1979年に、五輪代表選手の応援キャンペーンから一般に浸透したとされるが、そのルーツは64年に公開されたある映画のタイトルに端を発する。
これは「ナチスの宣伝五輪」といわれたベルリン五輪の記録映画『民族の祭典』から日本人選手の活躍を抜き出して編集したものだ。総指揮は、多くのナチス・プロパガンダ映画でメガホンを取ったレニ・リフェンシュタールが務めている。
新しい生活様式も結構だが、まずはこの全体主義丸出しのスローガンから卒業することのほうがはるかに重要なことではないのか。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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