コロナ不況に「がんばれ日本!」が、まるっきり逆効果になってしまうワケ:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
新型コロナの感染拡大を受けて、自粛生活が長引いている。そんな中で、「がんばれ!」という言葉をよく耳にするようになった。「がんばれ、もう少しの辛抱だ」「気を緩めてはダメ、がんばれ」といった文言が多いが、こうした傾向に対して、筆者の窪田氏は警鐘を鳴らしている。どういうことかというと……。
「待遇向上」を後回し
テレビやSNSではしきりに「医療従事者のみなさま、ありがとう」なんて感謝やリスペクトの言葉が述べられているが、現場で働いている人たちからすれば、それ以前の問題だった。昔のドラマで「同情するならカネをくれ」という名セリフがあったが、「感謝をするならカネと装備をくれ」が日本医療の現実なのだ。
このように個人の「がんばり」では乗り越えられない問題に直面しているのは、医療従事者だけではない。スーパーやドラッグストアはもちろん、食品の生産者、流通を支えるトラックドライバー、さらには介護や保育に携わる人々も同様だ。
なぜこうなってしまうのかというと、日本はずっと「働く人たちの待遇向上」を後回しにしてきたからだ。では、なぜそんなブラック企業のようなことを続けてきたのかというと「ガンバリズム」が原因だ。時間外労働、休日出勤、低賃金、過度なサービスによって心身が疲弊しても、ひたすら「がんばれ、みんなでがんばればきっと乗り越えられる」と叫ぶことでチャラにしてしまったのだ。
仕事のやりがいはカネだけじゃない。大切なのはその仕事でいかに社会に役立つかだ。仕事を覚えて一人前になるまではカネ、カネ言うな。石の上にも三年――。日本の労働者はまるで体育会のような精神論を叩き込まれてきた。それがもはや通用しない、というか限界に差し掛かっていることを、今回のコロナ危機が明らかにした。
安倍首相はこれから「新しい生活様式」が必要だと説いた。まったく同感だが、生活様式を変えるためにはまずは考え方も変えなくてはいけない。
例えば、雨が降ってもやりが降っても会社に定時出社せねばならぬ、といった考え方を変えないことには、「サラリーマンは満員電車に乗るのが当たり前」という生活様式はいつまで経っても変わらない。古臭い考えを続けたままで、生活様式だけ新しくするなんてムシがよすぎる。
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