コロナ不況に「がんばれ日本!」が、まるっきり逆効果になってしまうワケ:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
新型コロナの感染拡大を受けて、自粛生活が長引いている。そんな中で、「がんばれ!」という言葉をよく耳にするようになった。「がんばれ、もう少しの辛抱だ」「気を緩めてはダメ、がんばれ」といった文言が多いが、こうした傾向に対して、筆者の窪田氏は警鐘を鳴らしている。どういうことかというと……。
「ありがとう」で済ませてはいけない話
では、「がんばれ日本」と叫ぶことがよろしくないなら、コロナ危機を乗り越えるために我々は何を叫ぶべきか。それは、「働く人たちの待遇をもっと上げよう」だ。これは、新型コロナによって「崩壊」が叫ばれた「医療」を例にすると分かりやすい。
勤務医でつくる労働組合「全国医師ユニオン」が新型コロナの検査や治療にあたった医師172人に対して実施したアンケートによれば、「今回、危険手当の支給があった」と回答したのは約19%で、8割の人がいつも通りの給料しか出ていない。それどころか、「時間外手当がない」と答えた人は2割以上いたのだ。
そんな「個人のがんばり」に依存する医療現場で、彼らにがんばってもらうだけの十分なサプライチェーンが確保できていたかというと、そんなこともない。新型コロナの治療をする際に必要なこととして、約94%が「感染防護具の十分な供給」と答えているのにもかかわらず、医療用のN95マスクを「十分に確保されている」と答えたのは約15%にとどまっていたのだ。
医師を対象とした調査でもこれだ。すべての医療従事者まで広げれば、もっとひどい惨状が浮かび上がるはずだ。つまり、よその国ならばとっくに医療崩壊が起きていてもおかしくないところを日本の場合、医療従事者のみなさんが「個人のがんばり」で最後に踏ん張っていた。
これが日本のコロナ対策の現実なのだ。
と聞くと、「医療従事者に感謝!」という言葉が出てくるが、これは「ありがとう」で済ませていい話ではない。第二波、第三波もあると言われ、新たな感染症もある。システムとして医療従事者の待遇を変えなくてはいけないのだ。
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