「今1万円」と「一週間後に1万1000円」どちらを選ぶ? 行動経済学も取り入れるマネーフォワードラボ(2/2 ページ)
マネーフォワードが、お金に関する不安や課題を解決するたためのマネーフォワードラボ(Money Forward Lab)を設立して、1周年を迎えた。このたび、新たに技術顧問として、行動経済学を専門とする、慶応大学教授の星野崇宏氏を迎え、体制を強化して研究に取り組む。
「今1万円」と「一週間後に1万1000円」
行動経済学の有名な実験がある。「A:1カ月後に1万円もらえる」のと「B:1カ月と1週間後に1万1000円もらえる」のとでは、どちらを選ぶか聞くと、7割以上がBを選ぶ。わずか一週間待つ時間が増えただけで、もらえる金額が1割アップするとなら当然だと思うだろうか。
ところが「A:今1万円もらえる」と「B:1週間後に1万1000円もらえる」という質問に変えると、今度はAを選ぶ人が7割以上となる。同じ一週間の違いでも、「今」であることの効果はたいへん大きい。星野氏は、この現在バイアスを活用することで、人々の行動変化を促せると話す。
例えば、途上国への支援で、生産量アップのために肥料を買う資金を援助する場合だ。時期を考えず援助してしまうと、「肥料が必要になる3カ月後を待たず、別のことに消費してしまう」が、ちょうど農作物を収穫して収入があるタイミングで援助すると肥料購入率がアップするのだと、星野氏は説明する。
国内でも、環境省や経産省が次々とナッジプロジェクトを立ち上げている。広告などいわゆるマーケティングとは違った、行動変容を促す取り組みとして注目されている。
星野氏は、「マネーフォワードは網羅性、速報性があり、コミュニケーションツールとしての価値が高い。経営者や会計担当に、少し後押し(ナッジ)することで、よりよい方法に導く行動変容を促せる」と話した。
事業サイドとKPI、KGIを握る研究機関
開設から1周年となるマネーフォワードラボだが、研究の成果も出始めている。面白いのは、単に研究を行うだけでなく、事業サイドとKPIやKGIを握って進めている点だ。例えば、手書き文字認識機能については、「95%以上の精度を出すと(事業サイドと)握った」と所長の北岸郁雄氏は話す。
高い精度を実現できたため、事業サイドに技術を提供し、実装の検討に進む。ただし、「UIUXの検討プロセスの中で、研究サイドに戻ってくるケースもあるため、製品への実装時期を言い切るのが難しい」(北岸氏)のだという。
現在、机の上に並べた領収書を動画で撮影して自動抽出する機能や、手書き文字認識、請求書のどこにどんな情報があるのかを分析する構造解析、ユーザーの月間および年間の支出および消費行動パターンの予測などを研究している。一部は研究が完了し、製品への組み込みを進めている。
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