ワインのようなボトルに入って5000円 意外な進化を遂げていた日本の「お茶」:食の流行をたどる(3/5 ページ)
飲食店で食後に無料で提供されることが多い日本のお茶。付加価値を高めて売ろうとする新しい動きが出ている。どういった戦略なのか。
お茶をコンセプトにしたホテル
3つ目は、お茶をコンセプトにして差別化を実現しているホテルの事例だ。
東京・新橋にある「CHAYA 1899 TOKYO」。同ホテルは、東京・八重洲にある老舗ホテル「龍名館」の系列であり、日本古来、大事にされてきた「人と人をつなぎ、くつろぎの時間を彩る存在」である日本のお茶文化を大切にしたいとの想いでオープンしたようだ。
筆者も宿泊したことがあるが、まずチェックイン時には、茶釜を用い、古来の手法で丁寧にお茶を煎(せん)じてくれる。レストランで提供される料理も、お茶を使用した食事を中心としている。部屋に入ると、全てがお茶をコンセプトにしており、その徹底ぶりに驚かされた。思わず全てを写真に収めてしまうほどだった。シャンプーやボディークリームなどのアメニティーは全てお茶を使用したもの。部屋にももちろんお茶が用意されており、そのお茶と一緒にいただくお菓子にもお茶が使われている。そのお茶を楽しむための急須や茶碗も、部屋で過ごす時間を十分に楽しめるよう、大変おしゃれなのである。そして、ベットライトまでお茶をたてる茶せんをモチーフにしているのだ。このホテルには日本人はもちろん、海外からの旅行者も多く訪れている。
価格帯も、近隣のシティーホテルと同程度のため、どうせ泊まるなら特徴的なホテルを……と他のホテルとの差別化を図れているところにも注目をしている。
ディスティネーション化
4つ目は、お茶がディスティネーション(目的地)化されていることだ。
お茶を求めて旅をする「ティーツーリズム」に注目したい。佐賀県嬉野市にある宿泊施設の体験型プログラムである。こちらには「ティーバトラー」なる専門家が存在し、ゲストが滞在中、お茶のサービスを全て担ってくれるのだ。また、茶畑の中には「天茶台」が設営されており、嬉野市街と美しい山並みを眺めることができる。そして、美しい茶畑を望みながら、お茶を楽しむことのできる「茶空間」体験や、生産者と語らえる「茶話(さわ)」など多くの体験プログラムが存在する。「学び」「ストーリー性」を取り入れたこちらのプログラムは、まるで欧米で、ワイン好きがワイナリーを回る旅のように定着していけば、よりお茶の付加価値を高めてくれるのではないだろうか。
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