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副業の優等生、JR九州が放置した「傾斜マンション」の罪杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/6 ページ)

JR九州が1995年に販売したマンションで杭工事の不具合があったと発表した。20年以上の間、住民からの訴えを否定し続けてきたのが実態だ。住民はJR九州のブランドを信頼して購入しただろう。真摯に対応するきっかけはこれまでにもたくさんあったはずだ。

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JR九州の多角経営初期に販売したマンションの重大欠陥

 JR九州の優等生ぶりを理解していただいた上で本題に入る。問題のマンション「ベルヴィ香椎六番館」は福岡市東区にある。販売はJR九州と福岡綜合開発(現・福岡商事)のJV(企業共同体)が担当した。施工は若築建設とJR九州の子会社である九鉄工業だ。

 最寄り駅はJR香椎線の舞松原駅だ。徒歩1分の好立地は当然で、JR九州がマンションを販売するために設置した駅である。舞松原駅から博多駅まで乗り換え1回で約30分。18年度の1日あたり乗車人数は1040人で、JR九州の全駅数567のうち165位。マンション事業も鉄道事業も大成功。鉄道事業のために宅地販売を成功させた、阪急電鉄の小林一三の手法の再現である。


博多まで交通至便の好立地(地理院地図を加工)

 ベルヴィ香椎は壱番館から十番館まで合計8棟ある。忌み数字を嫌ったようで4番館と9番館は欠番だ。このうち壱番館から八番館までの7棟が香椎線の線路の西側にあり、十番館だけは線路の東側にある。舞松原駅の隣にはJR九州独自ブランドのマンション「MJR舞松原」もある。つまり、JR九州は新駅と込みで合計9棟のマンションプロジェクトを始めた。分譲は1995年とあるけれども、着手は90年から。JR九州が発足して3年後、初めて手掛けたマンション販売事業である。


現地の航空写真(地理院地図を加工)

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