2015年7月27日以前の記事
検索
特集

Zoom面接のプロが教える「採用のオンライン化」で得られるもの、失われるものアフターコロナ 仕事はこう変わる(3/3 ページ)

学生に対する企業の採用選考が6月1日、解禁された。この3カ月の間に、学生の企業選びの基準が大きく変化している。加えてオンライン面接を導入する企業も増え、選考の方法そのものも様変わりした。3冊の就活本を執筆し、この10年間、学生への就活指導をしてきた筆者が、オンライン面接で判断しやすくなるもの・判断しにくくなるものについて伝えていく。

Share
Tweet
LINE
Hatena
-
前のページへ |       

“小泉進次郎パターン”は見抜きやすくなる

<判断しにくくなるもの>

(1)その人の雰囲気やオーラ

 非言語的なものは判断しにくくなる。言っていることを文字起こしして読み返すと破綻しているが、雰囲気でなんとなく圧倒されてすごいと思ってしまう“小泉進次郎パターン”は、人が人を選ぶときに生じてしまうミスの1つだが、それが起こりにくくなる、と言ってもいいだろう。

 また、面接官に対して目をしっかりと合わせてくる就活生は自信があるように見え、そらす就活生は自信がないように見えるが、Zoom上では目が合っているかどうかが分かりにくい。むしろ、PC上部にあるカメラを見るとディスプレイに表示される相手の顔が見づらくなり、相手の顔を見ようとするとカメラ目線ではなくなるといった現象が起きる。

 これは、Zoomを使うとすぐに分かる、新しい共通認識と言ってもいいものだ。それによって“相手の目を見ないことが失礼にあたらない”という対面ではありえなかった新しいやりやすさも生じている。実際、対面での面接で男性面接官の目を見ることが苦手でうまく喋れなかったという女性の就活生は「オンライン面接になって、目を見なくていい分、ラクに話せるようになった」と語っていた。

(2)身体的特徴

 185センチの身長がある男子就活生は「これまでは正直、僕が面接会場に入った瞬間にでかいやつがきたな、みたいな感じで周りの就活生にも威圧感を与えられていたと思うのですが、当然のことながらオンラインになってそれは感じませんね(笑)」と語っていた。そう話す彼の身長が高いことは、自己申告されるまで分からなかった。

 対面の面接では、全身がその人のメッセージとなっていた一方、オンライン上は上半身だけが見える。例えば体育会系の部活出身の男性営業マンの体格から出る「なんとなく頼りがいがある」と感じる要素などは判断しづらくなる。これによって(1)のオーラが出なくなるタイプの人も多いことだろう。また男性の採用担当者の中には「正直これまで、女性のルックスのようなものに惑わされていた部分があったことは否めません。オンライン面接になってだいぶ冷静に判断できるようになったと思う」と語る人もいた。

(3)言語能力以外のコミュニケーション能力

 企業が“選考時に重視する要素”として“コミュニケーション能力”をあげるようになって約15年がたつが(2004年、経団連による「新卒採用に関するアンケート調査」では、コミュニケーション能力がその他を抑えて1位になった)、コミュニケーション能力は主に言語的なものと非言語的なものに分けられる。

 相手の表情や目線から相手の頭の中を判断したり、空気を読んだり……“察する”タイプのコミュニケーション能力は、オンライン上では発揮しにくい。上司のグラスが空いているときに気付いて酒をつげるか……といった“気遣いの力”は判断しづらくなるのである。

phot
2004年、経団連による「新卒採用に関するアンケート調査」では、コミュニケーション能力がその他を抑えて1位に
phot
2018年においても82.4%もの企業が「選考時に重視する要素」として「コミュニケーション能力」を挙げ、16年連続で1位になっている(日本経済団体連合会「2018年度 新卒採用に関するアンケート調査」より)

(4)ビジネスマナー

 ドアをノックする、お辞儀をする、先に座っている場合は人がやってきたら立つ……これら、旧来のマナーは、オンラインでは全て不要のものとなる。“知っているだけで実行できる”これらのものを、詰め込んで実行する就活生も少なからずいた。彼らの詰め込み知識に対する加点は今後なくなっていく。

 そしてこれら“旧来のマナー”は徐々に<判断しやすくなるもの(4)>で上げたような“新しいマナー”に取って代わられていくだろう。そのときに“新しいマナー”を熟知しているのは、採用担当者の側ではなく、就活生の側かもしれない。

就活生もまた企業を判断している

 面接のオンライン化によって、判断しやすくなるものと、判断しにくくなるものを挙げた。もちろん、これらの要素の何を重視するかは企業によって違うので、各企業の採用担当者は自社の基準に当てはめて、これらを差し引きして考えてもらえればと思うが、総じて「オンライン化によって失われるものは思ったほど大きくはない」という印象だ。先の問いに答えるのであれば「オンライン上でも人を判断することは可能」といっていいだろう。

 ここまで「企業側が就活生を判断する」という視点で、項目を挙げてきた。だが、気を付けてほしい。これらの指標は「就活生もまた企業を判断している」という観点でみると、そのまま自分たちにブーメランのように返ってくることになるのだから。

著者プロフィール

霜田明寛(しもだ あきひろ)

1985年東京都生まれ。東京学芸大学附属高等学校を経て、2009年早稲田大学商学部卒業。文化系WEBマガジン『チェリー』編集長。『マスコミ就活革命〜普通の僕らの負けない就活術〜』(早稲田経営出版)など、3作の就活・キャリア関連の著書がある。最新作は、ジャニーズタレントの仕事術とジャニー喜多川の人材育成術をまとめた『ジャニーズは努力が9割』(新潮新書)。日々の仕事や映画評、恋愛から学んだことなどを発信するネットラジオvoicy『霜田明寛 シモダフルデイズ』も話題に。Twitter


前のページへ |       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る