「脱ブラック」進むワタミ、コロナで大打撃ながらも従業員に“太っ腹”対応:働き方の「今」を知る(2/3 ページ)
新型コロナの影響が深刻だった居酒屋業界。そんな中、「脱ブラック」が進むワタミでは従業員に手厚い対応を見せた。黒字予想から一転、20年3月期は60億円超の赤字となりながらも矢継ぎ早に講じた対応は、どういったものだったのか?
新型コロナ「緊急事態」へのワタミの対応
まず、ワタミは今般の「新型コロナ緊急事態」にどのように対応してきたのか、から振り返ろう。感染防止のために、ワタミは4月13日から国内で運営する外食店舗約400店舗を休業し、社員は自宅待機とした。
その間に休職状態となった全社員に対して、給与の基本給10割の手当を支給していたという。休業手当については、法定基準では「平均賃金の6割以上」となっているため、大盤振る舞いともいえる。また、5月は基本給の8割を補償した。さらに、小学校休業等対応助成金を会社から申請し支給したほか、毎年開催している全社員参加の「創業記念祭」はリモートで実施するなど柔軟な対応をとったという。
なお、今回の人材派遣会社設立に先立ち、ワタミは5月4日、神奈川県を中心に展開するスーパーマーケット「ロピア」と社員出向にまつわる契約を交わしている。
ワタミでは店舗休業に伴って社員が休職、自宅待機していた一方で、首都圏1都3県に 48店舗を展開するロピアでは、食品や日用品の需要拡大により客数が増加し、従業員の雇用確保が喫緊の課題となっていた。休職中の従業員に働く場を提供したいワタミと、雇用を増やしたいロピアの利害は一致し、両社の提携に至った形だ。既に130人程度が出向勤務しているという。
ワタミからの出向者は、外食店舗での接客や調理といった経験を生かし、ロピア店舗で「即戦力」として活躍しており、ロピア側からの評判は上々のようだ。特に店長経験者などマネジメント経験は大変重宝されており、出向時に行う現場面接も免除されているという。
また、出向しているワタミ側の従業員からも「今までの仕事と違う目新しさがある」「異なる仕事を経験することで視野が広がる」など、新たな知見を得られる環境変化が好評であり、ワタミでは「出向解除後の自社の業務での相乗効果が生まれる」と期待感も大きい。この出向を希望した社員に対してもまた、ワタミは基本給の10割を補償している。
関連記事
- ワタミがホワイト企業大賞の特別賞を受賞 表彰式には渡邉美樹会長が笑顔で登場
ワタミの「三代目鳥メロ」がホワイト企業大賞の特別賞を受賞した。「働く一人ひとりのチャレンジ精神賞」という賞で、「創業当初からのビジョナリーな哲学を守りつつも、現場の一人一人が新しい組織になっていこうとチャレンジしている」点が受賞理由。同社は近年、労働環境改善に注力している。表彰式には渡邉美樹会長が笑顔で登壇した。 - 話題の「社員PC監視ツール」がテレワークを骨抜きにしてしまう、根本的理由
テレワークで従業員がサボらず仕事しているかを“監視”するシステムが話題になった。テレワークは本来「成果」を出すためなら「働く場所」を問わない制度のはず。こうしたシステムが出てくれば、テレワークが骨抜きになってしまい、生産性を高める「成果主義」が定着しない、と新田龍氏は指摘する。 - 「監視」や「名ばかり管理職」はもういらない 「ニューノーマルのテレワーク」に必要なものとは?
ニューノーマルの最たるものといえるテレワークだが、最近では社員の監視システムが登場するなど、旧来の「時間管理」の延長で運用する企業も少なくない。しかし、これでは新しい時代を企業が生き抜くことは難しいだろう。ようやく定着の兆しを見せるテレワークを「感染防止策」にとどめず成果に結び付けるには? 大関暁夫氏が解説する。 - Slackに“謎マナー”が発生「重要なことはメールで送る」「絵文字は2個まで」――Slack Japanの公式見解は
Slackに謎マナーが発生しているとSNSで話題に。「冒頭は喫緊でお世話になったことを述べ、お礼から」「メールと違って絵文字も駆使して親しみを出す、ただし1文に2つまで」といったものから、「重要なことはメールでお送りする」まで、ムダを生むようなものばかり。Slackの公式見解を聞いたところ…… - ひどすぎる店員への差別とハラスメント コロナ禍がもたらした「非常に強いストレス」
UAゼンセンがコロナ禍で発生した迷惑行為(カスタマーハラスメント)をまとめた。現場ではどんな言動があったのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.